★★★☆☆

首ざぶとん (朱雀門 出/角川ホラー文庫)

投稿日:2018年12月26日 更新日:

  • 妖怪(?)連作短編小説集
  • 推理もののようなファンタジーのような
  • テーマは「迷い込む」余り怖くはない
  • おススメ度:★★★☆☆

出だしは本格的な怪奇小説っぽいのだが、途中から「怪異があることが前提の話」として進むので、これは一つのジャンル小説。物語の核が怪談ではなく、殺人事件なら、軽めの推理物と言ったところ。

(さわり)薬屋でバイトをしているまりかは、親の勧めで華道を習っていたが、その先生が倒れた。代わりの先生は息子が務めるという。一度は断ったものの、気になって稽古に向かう。その先生(龍彦)は、昔の塾の講師で、しかも怪談の蒐集を趣味としていた。そこで、まりかは仄かな恋情もあり「おざぶ」と呟く穴がある山の話を聞きつけて龍彦に伝えるのだが……。実際に二人が経験することになる怪異とは?(首ざぶとん/表題作)

現代の京都が舞台で、リアルな地名も出てくる。時代設定はGPSの付いた携帯があるくらい近い。セリフも半分くらいは「京都弁」で進む。いや、「関西弁」と言うべきか。標準語も混じるので、そこまで方言にはこだわってない。「まりかと龍彦の妖怪事件簿」と言ったニュアンスかなぁ。人は死ぬが、残酷な描写は少ないし、雰囲気は暗くない。

表題作が冒頭にあるのだが、やはりこれが一番面白い。ネタバレになるので詳しくは書けないが、怪異との知恵比べの要素があり、ちょっと昔話っぽい。たとえば「三枚のお札」の様な雰囲気だ。たぶん、作者は妖怪、民話、怪異潭が大好きなのだろう。なのでホラーというより、やっぱり怪談と呼ぶべき作品。

他に携帯とそれにまつわる悪意の怪を描く「トモダチ」、火事と火付けをテーマにした「ひじり」、竹やぶに封じられた異国の魔物の騒動に巻き込まれる「羊を何度も掘り出す話」の計4話を収録。このところグロい話ばかりだったので、どれもかなりソフトな怪談に思える。

ジャンル小説と書いたのは、一定のパターンを繰り返すため。まりかがワトソンで、龍彦はホームズ。だいたい、まりかが迷い込む、龍彦が救う(或いは解説する)という流れをたどる。最後は流石に作者もまずいと思ったのか、別の人間から巻き込まれるのだが、まりかも出てくる。とにかく、探偵ものを例に出すまでもなく、なぜか主人公が不思議な体験を連続して体験する。その理由は言及されないので、そういうものとして読むしかない。

妖怪小説というのも、妖怪がいることが前提で、特に合理的な説明はないからだ。「一緒に怖い話でもして楽しもうよ」という本である。妖怪にこだわった作品は多いが、他の作家にはないフワフワとした不思議な読後感はあって、決して破綻はしてないし嫌いじゃない。ただ、不満もある。

一つは舞台設定がリアルな割には、事件は完全にファンタジー。パターンが同じなのはいいとして、宮司が出てきて解決する的な部分はちょっと安易ではないか。もちろん、色々パターンを外そうとしているが、どうも風呂敷の広げ方(畳み方ではなく)が一緒に思える。

主役の二人もイマイチ感情移入できない。イケメンの華道家と京都弁のバイトの女の子という設定なら、もう少し恋愛要素がありそうなものだが、ほんの形だけ。ラブコメホラーが読みたい訳では無いけど、こういう設定でそのエピソードがないのも不自然だ。言葉は悪いが記号的なキャラクター造形になってる。

結局、怪談好きの作者が、色々考えてこの形に落ち着いたのだろうが、よく言えば純粋、悪く言えば一本調子な現代怪談小説になっている。結論としては、ホラー好きには色々と非常に無難な一冊。年末年始休暇に、のんびり読む分にはそこそこ向いているのではないかと思う。

(きうら)


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