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★☆☆☆☆

日本一の幽霊物件 三茶のポルターガイスト (横澤丈二/幻冬舎文庫)

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  • 劇団を運営する著者の体験談
  • 全部実話というフォーマット
  • 写真が多用されているが……
  • おススメ度:★☆☆☆☆

本作はタイトルから掘り出し物の予感がしたので読んだ。概要は以下の通りだ。

【三茶のポルタ―ガイスト】として映画化!
絶対に”なにか”いると噂の稽古場。これは一体、土地の因果か、誰かの怨念か――? 30年にわたって“出続けている”心霊現象を追う、リアル怪談ドキュメント。   

「各階の間取りがすべて違う」。思えば最初から違和感はあった――。幼少期から霊感を持つ横澤は、主宰する劇団の稽古場を構えようと東京・三茶のビルを訪れる。その造りに不安を抱くも、駅近から契約を結ぶ。が、入居早々、エレベーターの床が水浸しに。そこには、大家から「絶対に話かけてはならない」と聞かされていた“異形”の者が立っていた……。【三茶のポルタ―ガイスト】として映画化! ”出る”と話題のヨコザワ・プロダクションの30年にわたる心霊現象を追った、怪談ドキュメント。(Amazon紹介文より引用)

個人的にこういったオカルト実話に対して、成人前まではある程度、本気で信じていた。これが第一期である。その後、インターネットの普及などもあり、私は「信じる」から「楽しむ」方向へ変わっていった。恐怖は多少感じていたが、フィクションとして捉えるようになった。これが第二期で40歳くらいまで。最終的な第三期は、何も感じなくなってしまった。どれも類型化されていて、私の根本的な疑問が解決されないからだ。特に最近はそう思う。歳をとった、のかも知れない。

本作の語り口はいかにも無邪気で、それはそれでリアリティがあっていいのだが、内容も浅くてのめり込めない。真偽はともかく、今時、モノクロ画像で霊の存在証明をされても説得力がない。VHSビデオがあるらしいがそれも同じだ。

また、本業でないため文章や構成が怪しい。時々、とんでもなく大きい活字で「幽霊は危害を加えるか?」というインタビューが始まったりして、これは水増しなのでは無いかと邪推してしまう。
最大の疑問はそんなに明確なポルターガイスト現象(下の階で音がする/物が壊れる)が日常的に発生するなら、未知のエネルギーの研究に最適なはずだ。霊存在の真偽は別として、メディアに売り込めば一大センセーションが巻き起こっていたはず。2023年現在、この物件が元となってポルターガイスト現象の仕組みが解決したという報告は確認できない。

以上の理由から、私としてはかなり「面白がれない」内容だった。呪われたらギャンブルで破滅するとか、そんな主観的な意見を読まされても……というのが正直なところ。まあこれも主観的な意見であるのは間違いない。

ちなみに、私は作品を貶すことを目的に本を読んでいない。本作を読み終えても、じゃあもう怪談は読みたく無い、と思わない。ただ、人に本作を勧められるかと言われるとノーだ。また面白そうな作品を探してみたい。

(きうら)


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