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★★★☆☆

婚礼、葬礼、その他(津村記久子/文藝春秋) ~あらすじ、感想と、ドラマの感想。

投稿日:2017年5月1日 更新日:

  • 披露宴と通夜とのブッキング。
  • 面倒なことをどう乗り切るか。
  • 簡単に読める。
  • おススメ度:★★★☆☆

本書の紹介に入る前に、4/22で紹介した『この世にたやすい仕事はない』がテレビドラマ化されていたので、観た感想を少し書きたいと思います。

ドラマは途中から観たので、二話分しか分かりませんが、いくつか改変(改悪)されているようです。まず、主人公がかなり美人です。これは、ドラマだから仕方ないのですが、そのためか男性の同棲者が設定されています。原作には独り身の女性だからこその面白さがあったが(生活の不安定さなど)、それがなくなり、住まいも多少お洒落になっていて、全体に余裕がありそうです。これでは話の根幹が変わってしまいます。自分にあった仕事を探そうという、大変さが消されてしまっています。ドラマの基調がコメディっぽくされてるのは、安易だがそうするよなあといった感じです。まあ、原作知らなければこちらの方が面白いのかもしれません。以上感想でした。

本題

(あらすじ)職場で同僚から腰が低いと言われたり、へりくだりすぎていると言われる「ヨシノ」。「ヨシノ」は子供の頃、誕生会もろくに開けなかったほど催し物に縁がなかったが、大人になってから、やたら結婚式に呼ばれるようになる。「ヨシノ」は、旅行の計画を取り止め、とある同級生の披露宴のスピーチと二次会の幹事を任せられるのだが、披露宴の最中に、職場の上司の父親が亡くなったので、通夜に来いと呼びつけられる。披露宴を抜け出し、通夜会場に駆けつけた「ヨシノ」が見たものは…。

こう書くと何か起こったかと思われるかもしれませんが、特に重大事が発生するわけではありません。通夜に列席した親族や関係者の、色んな思惑に巻き込まれ、「ヨシノ」自身が少し打ちのめされる状況に陥るだけです。面倒なことに巻き込んだ、当の上司の父親(故人)へのささやかな怨念を吐き出したり、飛び出してきた披露宴でのアクシデントへの対応に追われます。通夜(一応故人を偲ぶ場)と披露宴(一応門出を祝う場)が、一人の人物に同時に襲いかかるとどうなるかが、おかしさをもって描かれています。

「旅行の日程など関係なく人は結婚するし、人が結婚することになどかまわず人は死ぬ」という感慨は、何者にも関わらずに生きている人間以外、誰にでも当てはまることでしょう。何らかの形でしがらみがついて回るのは当たり前です。他人の都合は決して自分の都合と合うわけがありません。

逆もそうです。実際に披露宴中に、ほぼ付き合いのない人物の通夜に参列する必要はないでしょう。そこを敢えて書いているのは、フィクションだからというだけでなく、人間同士の付き合いの複雑さと面白さを書いているのです。そもそも、生まれようという意思もなくこの世に生まれさせられたわけですから、関係を完全に断つということが、できるわけがありません。

もう一編収録されている『冷たい十字路』では、自転車同士の事故をめぐる人間模様が多面的にかかれています。最近は、自転車の事故が多発していますが、気を付けなければいけないと思います。

(成城比丘太郎)

(編者補足)この物語は、他人に振り回される理不尽が怖いといえば怖い要素。未読なので断言できないが、「日常アタフタ系」のドラマが展開されるのではないだろうか。あと、自転車事故はマジで怖い。

(きうら)


婚礼、葬礼、その他【電子書籍】[ 津村記久子 ]


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