★★★☆☆

瞬殺怪談 業(複数著者/竹書房)~短すぎて紹介がネタバレに

投稿日:2019年7月26日 更新日:

  • 現代怪談のショートショート
  • 短いものは一行のものも
  • まあ、いつものやつです
  • おススメ度:★★★☆☆

夏といえば怪談、などと月並みはことは言わないが、毎度毎度懲りずに怪談集を探してきたので、ご紹介したい。本書の大きな特徴は二つ。

一つは総勢十名の著者による作品集ということ。その割には全体のトーンは統一されていて、大きな違和感はない。もちろん当たり外れはあるが、概ね似たり寄ったりというところ。クオリティが一定とも言えるし、単調とも言える。もちろん、難しい表現は一切ない。著者たちも行間まで読んでくれ、とは思ってないであろうし、これくらい軽い方が読む方が気が楽。「適当に読み飛ばす」(褒め言葉)にはちょうどいい。

もう一点は、ショートショートと書いたように非常に話が短い。連作も多少あるが、ほとんどは一話完結型だ。そういう構成なので、上記のように思い出した時に少し読むくらいでいいだろう。タイトルの「瞬殺」とはそういう意味だが、脳内から「瞬(忘)却」されてしまうのもいつものこと。読み終えた今も、実はほぼ思い出せない。これでは感想にならないので、少し気になったものを栞をつけながら読んだ。これから紹介したいが、何分もとが短いので、ほぼネタバレになるのはご容赦を。

ラバスト/神薫
タイトルはラバーストラップのこと。中古ショップで、何度売っても戻ってくる謎のストラップ。「それ触るな」という思わせぶりな台詞はあるが
、結局謎のまま。適度な不条理感があって本書の中では印象的だった。

スケキヨ/神薫
犬神家とは全く関係ない。それが言いたいだけ。怪人(?)の話だが、別にどうでもいい。因みに二連作で、二つ目でオチがつくが、少なくとも「瞬殺」はされない。失敗作の部類。

牛丼屋にて/つくね乱蔵
典型的は「住み着いた幽霊」の話。その場所が牛丼屋という点が唯一の個性。こんな店、あるわけないな、と冷めた気分で次に行ってみましょう。

観/黒木あるじ
これは多少テクニカル、悲惨な運命を辿った家族の生き残りが、その家の風習を話す。要点は聞き手がそれを聞いても驚かないところ。ネタバレと書いたので書いてしまうが、一家が発狂したのは、家族みんなで夜中に砂嵐のテレビを見てたから。ただ……今、砂嵐の放送なんて無いよね……若い人には分からないだろうなぁ。微妙なペーソスがある昭和風味のお話。

申請/平山夢明
これは短い。なので引用は全文。

田中のところには亡くなった人からの〈友達申請〉が来る。今までに五度きている。

こういうのが好きなら、この本は合っている。個人的にはFacebookをアルゼンチン人に乗っ取られ、勝手に友達を百五十人に増やされた過去の経験の方がこわい。もちろん、そのアカウントは瞬殺しました。

あるパイロットの疾走/鈴木呂亜
これは世界何とかのテレビでやってそうな「本当にあった海外の怖い話」であるが、この手の真偽不明な話を書く作風は嫌いだ。3つ続く。裏を取ってないから薄っぺらいことこの上ない。疑似科学にも似た胡散臭さ。だいたいUFOの話とか今するか。未だにロズウェル事件とか引っ張ってくるし……。

許可は得ている/小田イ輔
ゆっくり読めばオチはすぐわかるが、なにせ短いから騙される。余韻が楽しめるという点で、この本の主旨にあったいい作品では無いだろうか? 許可を得た話を収録しているのだが、何の許可かはお察しの通りです。

真実は帳尻を合わせてくれる/鈴木呂亜
胡散臭いと思ったらやはり同じ作者か。この世で災厄の予言ほど、馬鹿馬鹿しいものはない。悔しかったら「人間はいつか死ぬ」以外の予言をしてみて欲しい。まあその類い。もう一個あるが同じ系統。ツタンカーメンの呪いとかって、今、信じてる人いるのだろうか?

祖母の穴/つくね乱蔵
大好きな祖母だったが、子供の頃、おんぶされるのが嫌だった。なぜなら、祖母の背中には……と、いう正統派怪談。途中までは良いんだが、最後は蛇足だと思う。あ、今書いて分かったが、この感想が駄洒落になってしまった。そこまで考えて書いたなら凄い、けど多分違う。

出る会社/我妻俊樹
ほんとーに良くあるこの建物に「幽霊が出ます」系怪談だが、書き方によってちょっと雰囲気が変えられるという例。ほんのちょっとだけど、狂気を感じて面白い。

終わる前/小原猛
離婚前にキッチンできた幻とは!?︎ ここで幽霊とか天井から髪の毛が垂れてきたら、もう忘れてたと思うが、何とこれが赤い巨大ゴキブリなのである。実にシュール。何度も使えない手(この本でも異色の作風)だが、一般ネタならアリ。

てな訳で、ざっとこんな感じで、川底で砂金をさらう気分で読めば(くどいが褒めてる)それなりに楽しいのではないかと。怖いか怖くないかは幽霊などを信じてるからどうかによる。私の周りにはなぜか「見える」人は一人もいなかった。いや、一人いたっけ。今、拝み屋をやってるとか何とか人伝に聞いた。今は付き合いのない男だが。

(きうら)


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