★★★☆☆

追悼・白土三平 ~再掲・カムイ伝全集 第一部(1)(白土三平/小学館)

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今年は大物漫画家が亡くなることが多く、個人的に大変ショックを受けている。白土三平(あえて敬称は略する)もそうだ。前にも書いたが私の3大トラウマ漫画が「サスケ」「はだしのゲン」「ザ・サバイバル」である(全部図書館にあった)。なんと、このうちお二人が今年亡くなってしまったとは…! 「サスケ」はコロコロした可愛い絵柄だが、いきなり子供の四肢爆散シーンが出てきたりして、正直今でも引く。しかし裏を返せばそれだけ世界の真実を表現に込めていた訳で、拝金主義、コンプライアンス、ポリティカル・コレクトネスなどによって動きを封じられた「正しいメディア」の感動ポルノ群にはない強烈な眩しさがあった。

逆説的になるが、人も死なず、誰も傷つけず、表面上の戦いだけを演じて、キスだけで愛情を表現し、最後に美しい歌を唄うような手法で、この世界の深部をえぐることができるだろうか。その全く反対の表現手法を用いて描かれているのが「カムイ伝」シリーズだろう。以下に再掲する。どちらかといえば私は当時の政治問題を描いているが、本編はとにかく長い話なのでいろんな読み方ができるだろう。

私の中のトラウマの創造主、白土三平。お疲れさまでした。

(きうら)

  • 作者渾身の長編
  • 人種差別を問う群像劇
  • 娯楽的ではない
  • おススメ度:★★★☆☆

2020年6月7日現在、アメリカで黒人差別に抗議する大規模なデモが続いている。発端は、一人の黒人が白人警官に圧死させられたことだった。そこから、黒人全体、さらに社会全体への黒人差別への抗議行動が広まった。「Black Lives Matter」をスローガンにさらに拡大の兆しが見える。コロナ禍の中、漸く一息つきそうな所で、トランプ政権にとっては頭の痛い問題だろう。当然、これは突然起こった問題ではなく、根深く存在する黒人差別問題が再び発火したとみるべきだろう。私は16歳、35歳、45歳くらいの3人が暴動について議論する有名な動画を見た。その中で、45歳はも35歳も同じことを経験していて、暴動を起こす他ないという。しかし、16歳にはそのことは継承したくない。その強い怒りと戸惑い、口惜しさ、絶望、そして、少しの希望が伝わってきた。

本作「カムイ伝」は、江戸時代の身分制度、いわゆる「部落問題」を扱った長編漫画である。表面上はダークヒーローとしてのカムイの活躍がメインだが、どちらかと言えば、差異と差別はどこで生じるのかをテーマとする壮大な差別論である。右翼的思想団体が嫌うタイプの本で、これを読んで共感したと言えば、何某かの不利益を被る時代があっただろう(今もそうかもしれない)。

考えてみれば、今の私たちが考える江戸末期の風俗は、昔の人たちの「理想郷」のように描かれていることが多い。清潔さ、礼儀、粋な風俗、平和……その反面、純然たる身分の差別があったことは明白で「理想郷」とするには、少々不足しているものが多い気がする。

そもそも、江戸が豊かであったのは、年貢を納める地方の貢献があってのものだ。形は違えど、現在も首都圏が潤っているのは、マイナーな県の貢献が不可欠とも言えるだろう。皮肉にも、コロナ禍では、その「一極集中した富」の負の側面が露出したが、それでもある種の差別感は肌感覚で生き残っているように思う。

カムイ伝は、言ってみれば身分制度の最下層に置かれた非人(変換できないとはな)の誇りを示す存在である。ただ、全体的には、虐げられた人々の悲哀を描く歴史巨編と言えるだろう。

そのような内容なので、読むのは正直言って重たいものがある。当時の許容される最大限の残酷描写はあるし、人はあっけなく死ぬ。差別のもつ不合理さを漫画そのものが表現しているようにも思える。

忍者ものとしても読めるので、そういうのが好きな読者には楽しめると思うが、横道にそれることも多いので、一筋縄ではいかない作品であると明記したい。また、かなりの長編作品なので、最後まで読むにはかなり力がいる。さらに完結していないということも知った。長大な「カムイ・サーガ」になっている。単純に楽しみたいのなら、もっとお気軽な忍者ものを探す方が良いかも知れない。例えば「サスケ」など

さて、差別の問題である。これは、ある。

これは人間の本性みたいなものである。ここに一つの利権があって相手より自由に操れるとしたら、これを弱者に譲る人は少ない。

国の補助金がらみの話題でホットな「一般社団法人 サービスデザイン推進協議会」であるが、国から受けた事業をそのまま「電通」に横流しするだけの組織である。理事は8人もエントリーされているが、事業の実態は不明。Googleマップで見てみたが、とても全国の中小企業の細かな要望をさばけるような事務所ではない。

まあ、国から国民は馬鹿にされているのである。

こういった表層的な差別意識の下に、今も部落差別問題は厳然たる事実として生き続けていて、あなたの人生でも、ふとした瞬間にそれが牙を剥くことがあるだろう。

差別をなくすというのは、人間がもって当然の「我欲」と「理性」との戦いである。多くの先人がこの戦いに挑み、着実に前進してきた。しかし、人間は弱い。「我欲」を完全に放棄できる人間の集まりなど存在するのであろうか。

自分で築いた1億円の資産を半分、社会的弱者に分け与えろと言われて、貴方は喜んで頷くだろうか。また、自分より楽な仕事をしている人間が、自分の収入の10倍を得ていることに納得できるだろうか。

これ以上は泥沼になるので書かないが、そういった問題を取り扱ったのが、本書である。

私は思う。必死に生きていることに変わりはない。できるだけ、論理的に正しい方法で、それぞれが報いられることを願いたい。

誰も救ってくれないのだから、そう祈りたい。

(きうら)


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