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風の谷のナウシカ(1)~(7)(宮崎駿/徳間書店)

投稿日:2017年3月14日 更新日:

アニメ版の後の長大な物語

残酷な死や直接的な戦闘描写

アニメ版ナウシカを少しでも好きな方は必読

おススメ度:★★★★★

いつもはなるべく客観的に怖い本を紹介しているが、今回はほぼ、自分語りに近いものだ。

個人的に、宮崎駿氏は御存命のアニメ監督としては最大の天才だと思っている。その私の思いは尊敬というより、畏敬や崇拝に近い。それは氏が関わった作品と他の作品を比べれば一目瞭然だ。ストーリーもそうだが、主にその「動き」が天才的だ。キャラクターやマシンの生き生きとした仕草や挙動が、他の監督の作品とは全く違う。

それは「名探偵ホームズ」というアニメを観ればよく分かる。このアニメは、全26話あるが、諸般の事情で宮崎氏は五話だけ絵コンテと演出、一部脚本を行った。そして、それ以外の作品と比べれば、残酷なほど面白さが違う。同じような話を同じキャラクターでやっているのに、その他の話は余り魅力を感じない。世の中の全アニメを通して最高の演出ができる驚異の歴史的天才だと思う。

「風の谷のナウシカ」は自分が初めてハマった本格的な「物語」で、もはや語る必要もないくらい有名だ。ただ、それはアニメ版のストーリーで、漫画版はアニメ版ほど知られていないのが残念だ。
あらすじはご存知の通り、ナウシカという少女が崩壊後の世界で、風の谷を守るために心ならずも戦うという話だ。ナウシカは「敵」であり、他の人間が嫌う蟲と心を通じ合うことができる。そして、世界を征服しようとする悪の軍団と蟲が襲ってくる。それを身を挺して救うのがアニメ版の概略だ。

ただ、全体のお話でいえば、その部分は映画用にアレンジされた「プロローグ」的なもので、漫画版はその先の壮大な物語を描いている。そこには、リアルな死や人間の醜さや宿業など、怖い要素が満載だ。絵的には腕や首が飛んだり、直接的な残酷描写も多い。しかし、それは必要な描写で、それが作品に絶対的な重さを与えている。

映画に登場したキャラクターも、漫画版では役割が違う。敵の象徴だったクシャナは、むしろナウシカを助けるし、悪の参謀だったクロトワは、アニメ版の何倍も味のある魅力的なキャラクターだ。他にもユパはもっと大活躍するし(彼の結末も壮絶)、重要な新キャラクターも多数登場する。もちろん、ナウシカは勧善懲悪を超えて活躍し、人間の本質の深淵へ踏み込んでいく。
絵柄が絵コンテ風なので、今風のコミックからすれば、最初は少し見づらいと感じるかも知れない。漫画の文法に優れた人は他にもいると思う。しかし、その中身は唯一無二の世界だ。これを上記の些細な理由で読まないのは非常にもったいない。緻密な作画と物語。映画版で興味を持たれた方は、絶対に読んで頂きたい作品だ。

最近、引退を撤回してもう一度長編作品を作られるという噂を聞いた。御年76歳だが、まだまだ面白い作品を作って頂けると信じて疑わない。

(きうら)


(楽天/7巻組)


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