3行で探せる本当に怖い本

ホラーを中心に様々な作品を紹介します

★★★★★

殺人犯はそこにいる (清水潔/新潮文庫)

投稿日:2017年3月13日 更新日:

実在の誘拐事件に迫る迫真のドキュメント

日本の警察や司法、マスコミへの警鐘

心を揺さぶる文章。読まないのはもったいない

おススメ度:★★★★★

実はこれを「怖い本」というカテゴリーで紹介していいのか迷っている。内容は間違いなく傑作だ。ただ、実在の「事件」を扱っているため、余りに内容が重く、軽々と紹介していいものかどうか迷ったが、結局紹介することに決めた。それほど内容が素晴らしい。

勧めてくれた書店員さんによると、最初「作品名」を隠して売られていたらしいが、その理由が「一人でも多くの人に読んで欲しい」という理由で、ある小さい書店の店員が以下のような表紙で「仕掛けた」らしい。後に「題名がない本は買えない」というクレームが来て、表紙に題名を入れたそうだ。タイトルだけ読むと、推理物小説に見えるから、その気持ちはよく分かる。

hannninn - コピー.jpg

概要は、未解決事件である「北関東連続幼女誘拐殺人事件」についての詳しいドキュメント本で「足利事件(Wiki)」の経緯が詳しく書かれている。そして、ネタバレになってしまうので書けないが最後に重要な事実が明かされる。あくまでドキュメント、しかめて極めて真摯に書かれたドキュメントで、推理小説ではない。

読んでみて、これ程の熱意と正義感を持って戦っている実在の人物がいることに驚いた。自分の不見識を恥じるばかりだ。そして、少なからずその「決意」に驚嘆する。本人は作中で自分は凡人だと書いているが、とんでもない。彼は偉大な記者であり、ヒーローと言っても過言ではない。

徹夜で一気読みしたのは久しぶりの経験だ。そして内容の重さについても最大級だ。何しろ、現実である。主にこのブログで扱っている「物語」とは訳が違う。これを読んで何も感じない読書ファンはいないと本当にそう思う。感動とも違うが、その「熱さ」には震えがくる感覚がある。

最初に書いたように楽しく面白い怪談話やホラーやサスペンスではないので、このサイトの趣旨にあうかどうかは分からないが、間違いないく「怖い」本だ。そして、簡単に扱えない内容。ただ、本人も書かれているが「どんな形でもいいので、一人でも多くの人にこの事実を知ってほしい」と、書かれているので紹介した。

間違いなく傑作だ。そして未読の方は「今すぐ」読んだ方がいい。その理由はある程度読めば分かる。絶対に後悔はないと信じている。

(きうら)


(楽天)


-★★★★★
-, , ,

執筆者:

関連記事

息吹(テッド・チャン、大森望〔訳〕/早川書房)~読書メモ(54)

久々に出た2冊目の短編集 テクノロジーを通して人間を問い直す オプティミズム志向のSF オモシロ度:★★★★★ テッド・チャンの二作目がようやく出版された。『あなたの人生の物語』以来で、17年ぶりだと …

きまぐれオレンジ☆ロード(まつもと泉)

さよならオレンジロード 追悼記事みたいなもの 劇場版について 劇場版の衝撃度:★★★★★ 去る10月6日に漫画家のまつもと泉先生が亡くなった、という報にふれた。ふだん、ちょっとした有名人が亡くなっても …

『手招く美女』(オリヴァー・オニオンズ/南條竹則、高沢治、舘野浩美・訳/国書刊行会)~「読書メモ(69)」

「読書メモ(69)」 心理的な恐怖。 何かの存在と感応する人たち。 オススメ度:★★★★☆ 【本書について】 オリヴァー・オニオンズは、1873年生まれのイギリスの作家です。色んなジャンルの作品を書い …

生まれてきたことが苦しいあなたに(大谷崇/星海社新書)

「最強のペシミスト・シオランの思想」という副題 「気鋭のシオラン研究者」がえがくシオラン像 元気が出るサプリではない(読む人次第) オモシロ度:★★★★★ 【本書について】 まず、本書のタイトルはどう …

風の谷のナウシカ(1)~(7)(宮崎駿/徳間書店)

アニメ版の後の長大な物語 残酷な死や直接的な戦闘描写 アニメ版ナウシカを少しでも好きな方は必読 おススメ度:★★★★★ いつもはなるべく客観的に怖い本を紹介しているが、今回はほぼ、自分語りに近いものだ …

アーカイブ