★★★★☆

もっと厭な物語 (文春文庫)~あらすじとそれに関する軽いネタバレ、感想

投稿日:2017年4月6日 更新日:

  • 読後の厭な気分を味わうM系短編集
  • 合わない話もあるが、基本面白い
  • 不思議系、グロ系、寓話系なんでもあり
  • おススメ度:★★★★☆

これも店員さんに薦めてもらったので、店員さんというタグをつくってしまった。これの前に「厭な小説」という本があるのだが、なぜだか、2冊目を買ってきてしまった。率直な感想は「面白い話が多かった」で、このサイトの趣旨に合う「怖い話」もたっぷりある。

まず、しょっぱなが夏目漱石大先生。「夢十夜(Wiki)」の第6夜で「こんな夢を見た」という書き出しで始まる奇妙なお話。子供をおぶっていたら、いつの間にかそれが別の何かに…という短い小説。流石に文豪だけあって読みやすくて味がある。しかし、この本の中では前菜に過ぎない。蛇足だが「こんな夢を見た」ってどこかで聞いたフレーズだと思ったら、黒澤明監督の映画「夢」じゃないか。でも、映画の方はちょっと……。

狂人へ変貌する過程を描く「黄色い壁紙」や、哀愁を感じる昔話風の「赤い蝋燭と人魚」もいいが、「皮を剝ぐ」(タイトルからしてヤバい)と、「恐怖の探求」が気に入った。
「皮を剝ぐ」は、まんま直球のグロい因果モノ。本当に皮を剥ぐシーンが多発するので、注意が必要だが、異様で陰湿な熱気があって中々楽しませてくれる。残酷な話で、厭な気分になるが、面白いという不思議な読後感だ。

この本のハイライトは多分「恐怖の探求」。これは変態要素満載の陰湿なサスペンス・ミステリだ。知ってる人は分かるかも知れないが、実話を基にした映画「e’s」との類似性を感じる、何とも嫌な小説だ。嫌さ度合では一番酷い。人間の善意をどう剝ぎ取ったら「恐怖」に変わるのか。この悪意あるテーマをじっくり読ませてくれる。「人間が怖い」系の話が好きな人は必読。
読みやすいし、変化に富んでいるし、クオリティも高い。確かに「厭」な気分にはなるが、同時にそれに愉悦も感じられるという良書だと思う。編者自身が「基準はただ一つ―-バッドエンド100%」と言い切っていますので、それでも良ければおススメの一冊です。

(きうら)

もっと厭な物語 [ 夏目漱石 ]


-★★★★☆
-, ,

執筆者:

関連記事

ダーク・タワーII 運命の三人 上 (スティーヴン・キング (著)/風間 賢二/角川文庫)

いきなり超展開するキング流西部劇&ファンタジー スリリングなシーンと比較的退屈なモノローグ アイデア満載。確かにもっと認めて欲しい気持ちは分かる おススメ度:★★★★☆ まずは、これを見て欲しい。 そ …

フォレスト・ガンプ 一期一会 (ロバート・ゼメキス ・監督)

イノセントな男の数奇な人生 人生の残酷さと優しさと ベトナム戦争のシーンが印象的 おススメ度:★★★★☆ 「Run! Forest! Run!」と叫ぶジェニー。走り出すフォレストは、足に矯正器具を付け …

飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選 (岡本綺堂/幽クラシックス) ~あらすじと感想、軽いネタバレ

怪談と名のついているが、壮大な歴史伝奇ミステリ ミステリ、因果もの、悲恋もの、歴史、サスペンスが合体 岡本綺堂らしい、読みやすい文体 おススメ度:★★★★☆ 本の紹介にはこうある、以下引用する。 本書 …

海外文学(小説)おすすめ50作品+α(成城比丘太郎のコラム-02)

非-専門家がおすすめする海外文学(小説)。 私の好きな本、もう一度読みたい本を中心に。 一応ホラー的な、ファンタジー的なものもあります(暗い本も)。 おススメ度:★★★★☆ ※編者注 一応全ての作品に …

神聖喜劇(1)(大西巨人[原作]・のぞゑのぶひさ[漫画]/幻冬舎)~紹介と感想

大西巨人の大作の漫画化作品。 軍隊内の克明な記録。 主人公東堂太郎の博覧強記ぶり。 おススメ度:★★★★☆ 今回取り上げる本は、大西巨人(wiki)が執筆に25年もかけた大作『神聖喜劇』の漫画化作品で …

アーカイブ