3行で探せる本当に怖い本

ホラーを中心に様々な作品を紹介します

★★★☆☆

平面いぬ。 (乙一/集英社)

投稿日:2017年2月28日 更新日:

表題作ほか、4つの短編を収録

ホラー要素よりファンタジー要素が強い

独自の世界観とどこか暖かい読後感

おススメ度:★★★☆☆

収録の順番でいえば、和風メデゥーサの話を描く「意志の目」、一種の幽霊譚となる「はじめ」、不思議なぬいぐるみを描く「BLUE」、そして表題作の「平面いぬ。」が続く。

「平面いぬ。」の導入は、ひょんなきっかけで、少女が謎の中国人に犬のタトゥーを入れてもらう所から始まる。その犬は「ポッキー」と名付けられるのだが、実はどうやら「生きて」いるようで……という感じで、家族の不幸と直面する少女の気持ちが描かれている。

乙一氏は奇抜なアイデアを形にする作風であるようで、ファンタジー・ホラーとなっているが、どれもホラーと言うよりファンタジーに近い。怖がらせるというよりは、不思議がらせる、かつ、心に暖かいものを残すようなそんな作品が多い。特に「BLUE」にその傾向がつ用ように感じた。文庫の裏には「天才・乙一」と書かれているが、確かに論理を積み上げる秀才タイプの小説ではなく、誰もが考え付かないネタを作品にする作家だと思う。

結局、怖い話としては、別に怖くないので、特別おススメはしないが、著者独自のテーマと文章には、確かに他の作家にはない「何か」があるので、好きだと思う人はトコトン好きになるタイプだろう。「平面いぬ。」のアイデアは、ちょっと改変すれば長編としても機能するんじゃないかと思った。

蛇足:著者は1978年生まれということで、確実にアレ「根性、根性、ど根性~」を知っている世代だと思うので、私もそれを思い浮かべた。カエルや犬もいいが、美少女など彫ってはどうかと思うが、そうすると中島らも氏の「昔般若を掘った老人が、歳をとると(皮膚がたるんで)恵比須様になった」という話を思いだして、やっぱりその案もよくないと思った。

(きうら)


平面いぬ。 [ 乙一 ]


-★★★☆☆
-, , ,

執筆者:

関連記事

TENGU (祥伝社文/柴田 哲孝) ~あらすじ・レビュー

「天狗」をテーマにした大真面目なサスペンス・推理系小説 超常現象には極力頼らず、合理的結論が用意されている 社会情勢などの時事ネタ要素もあり。文章は読みやすい おススメ度:★★★☆☆ インパクト抜群の …

ホワイトアウト(真保裕一/新潮文庫)

驚愕するほど読みやすい文章 構成はシンプル。ダムを舞台に男が暴れまわるのみ 小説がオリジナルだが、映画版のノベライズのような作品 おススメ度:★★★☆☆ 本作は、厳冬期のダムを乗っ取ったテログループに …

はじめの一歩(137) 〜ネタバレ感想

それでも読むか、読まないか ある意味完全に予想通り ウォーリーは負ける(予想) オススメ度:★★★☆☆ 【前説】 ホラー小説のレビューを読みに来たら、ボクシング漫画の感想が載っていた……と、いう気分だ …

「ゆるキャン△」の秋(成城比丘太郎のコラム-07)

「コラム」という名の穴埋め企画(三度目) 「ゆるキャン△7巻」から アニメに出てくる飯や、本屋のことなど おススメ度:★★★☆☆ 【はじめに】 10月に入り、私は強烈な秋の花粉症に悩まされていたのです …

悪魔にもらった眼鏡(短編集、亀山郁夫・野谷文昭〔編訳〕/名古屋外国語大学出版会)~読書メモ(43)

読書メモ(043) 19世紀から20世紀までの欧米・ロシア文学から 幻想文学、ホラー、普通の文学までいろいろ おススメ度:★★★☆☆ 【はじめに】 本書は、これを出版した大学出版会が、学生向けだけでな …

アーカイブ