- 本当に長いファンタジー漫画の一つのターニングポイント
- 簡単に言えばふりだし(13)に戻る
- うっすらと虚無感も……
- おススメ度:★★★☆☆
まず、この漫画をご存知ない方は過去記事の「ベルセルク 1」を、全巻を読まれた方は「ベルセルク 39」をご覧ください。一応、三行にこだわって38巻までの内容をまとめると、
- 稀代の戦士ガッツと王を目指す無名の騎士グリフィスが無敵の軍団を作った。同軍団のキャスカという女戦士がヒロイン。
- グリフィスの失敗(王女を夜這い)で彼は全てを失うが、ガッツ、キャスカを含め、仲間を悪魔的存在に売って復活した。
- 生き残ったガッツは、グリフィスを憎悪しつつ、衝撃で正気を失ったキャスカ(彼女)を助けるため妖精郷をめざした。
(40巻あらすじ)キャスカの精神世界に入り込んだシールケ(魔女の少女)とファルネーゼ(元騎士団長・女性)は、その悪夢のような精神世界の中でキャスカの記憶を拾い集め、彼女の復活をめざす。その途中には、想像を絶する障害があったが、彼女たちの努力で、ついに精神の中枢にたどり着くのであった。そして、キャスカは……。
私は物心ついた時から、長編ファンタジーというものが媒体を問わず大好きだった。小説では数多のラノベ、ドラゴンランス戦記を端緒とする海外ファンタジー、ゲド戦記やナルニア国物語、言うまでもなく指輪物語、その他、ファンタジーと名がつけばすかさず読んでいた(ハリーポッターぐらいまで)。映画・ドラマでは、ウィローやラビリンス、ネバーエンディングストーリーにコナン、バンデッド、バーホーベンの「グレート・ウォリアーズ/欲望の剣」、ゲームオブスローンズなど。そして、漫画ではこの「ベルセルク」が最も長い付き合いのファンタジー・コミックとなっている(ヒストリエもあるが)。アニメは宮崎アニメをはじめ、ファンタジックな映画は多数見たが、媒体的に適さないようにも(最近はアルスラーン戦記を見たが、やはり尺が足りない)。
以下は、少なくとも20巻位までは読んだ方向けの感想である。
この40巻は、巻数の節目であるだけでなく、内容的には非常に重要な意味を持つ。簡潔に説明すると、13巻で止まってしまった物語が、ようやくそこまで巻き戻ったということなのである。いや、それにしても長かった。
本来は仲間を売って超常的存在になったグリフィスにガッツが挑む話であったはずだ。その味付けとして、キャスカの記憶が飛んでしまったはずなのだが、いつの間にか本筋がこのキャスカの方に移り、完全に別物の漫画に置き換わってしまった。13巻までは過激なエロ・グロ・アクションを売りとする生粋のダークファンタジーであった。ところが、14巻からは、一枚ずつベールをはぐように徐々にその度合いを薄め、エロ・グロ展開からアクションだけを残し、ギャグ要素が追加されていった。そして、今やシリアスな要素はあるものの、真っ当なファンタジー漫画として掲載されている。
たぶん、長い時を経て作者の嗜好が変わったのではないかと思うのだが、これも長い長い前振りだろうか。そう思うのは、本巻で再開を果たすキャスカとガッツであるが、再開後の3枚の絵が、まさしく「不幸」そのものであり、決して「めでたしめでたし」にする気が無いのが分かるからである。
憎いのはここから先が読みたかったのに、グリフィス側に視点を移して、話をはぐらかされてしまったことだ。また、1年以上待たないといけないのかと思うと、軽く目眩がする。
正直、ここからどう収束させるつもりなのか、全く分からない。話を端折らないとすれば、ここからグリフィスに到達するまで、まだ20巻はかかるであろう。そうすると、作者が敬愛していた栗本薫氏のグイン・サーガと同じ道をたどるのではないかという心配がよぎる。
画力は相変わらずであるし、話の展開も気になるのであるが、初期の熱量はやはりない。いったい何がしたいのかもわからなくなってきた感がある。いっそ、ベルセルクは捨てちゃって、もっとお気軽なファンタジーに鞍替えした方が良いのではないかとちょっと思ったりしている。
何にしても未読の方には途中までは面白い傑作だと断言できるが、その後は「振り落とされるなよ」という作者の無言の掛け声を聞きながら、気長に付き合っていく感じだ。
まあ、もう少し一緒に歩んでみたい。キャスカはどうなった!?(約20年前と同じ感想)
(きうら)