3行で探せる本当に怖い本

ホラーを中心に様々な作品を紹介します

★★★☆☆ 読書メモ

エデン郡物語(ジョイス・キャロル・オーツ、中村一夫〔訳〕/文化書房博文社)~読書メモ(42)

投稿日:2019年6月7日 更新日:

(Amazonに画像無)

  • 読書メモ(042)
  • 「ジョイス・キャロル・オーツ初期短編選集」
  • 「北部のフォークナー」
  • おススメ度:★★★☆☆

去年ようやくレムの『エデン』を読んで、そのことを調べているときに、本書のことを知ったので、図書館で借りてきて読んだ。もちろん『エデン』とは一切何のかかわりもない(と思う)。「エデン郡」という架空の土地をめぐる短篇集。この「エデン郡」とは、アメリカ北部と読みとれるよう。以下、収録作品。

・「国勢調査員」
・「盲目の少年との出会い」
・「世界の果て」
・「儀式」
・「白い薄い冬の霧」
・「川のほとりで」
・「洪水に流されて」
・「北門の傍で」

読み始めたはじめの方の短篇は、読んでいるとなんか眠たくなるような、つかみどころのないかんじだった。しかし、読みすすめていくうちに、だんだんと不穏なかんじが作中から漂ってきて、目が覚めてきた。とくに、後半の三篇は、人殺しとかの暴力的な光景が、急に車道へとび出してきた人間の驚いた顔が、一瞬に刻みつけられた永遠のようにひろがって、これはなかなかのおもしろこわさ。

まとめ。人間のちょっとした悪意の噴出といった、そいつらの様々な感情と、それらにあわせて起こったかのような土地にふりかかる自然現象が、なんかごっちゃに渦巻いている。何も期待せずに読んだので、かえっておもろかった。

(成城比丘太郎)

-★★★☆☆, 読書メモ
-, , ,

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

「承認欲求」の呪縛(太田肇/新潮新書)~読書メモ(44)

読書メモ(044) 「承認欲求」のネガティブ面を捉える 何でもかんでも「承認欲求」から読み解く おススメ度:★★★☆☆ 【本書について】 最近よく聞く「承認欲求」というワード。これはたとえば、「あいつ …

ヒロシマの人々の物語(ジョルジュ・バタイユ[著]・酒井健[訳]/景文館書店)~概要と感想

バタイユの「ヒロシマ」論。 ナガサキにも通じるものがある。 後半はバタイユの思想についてさかれている。 おススメ度:★★★☆☆ 本書は、バタイユが、ハーシーのルポルタージュ『ヒロシマ』(1946年)を …

ミスト(フランク・ダラボン監督)~暇なのでゆっくり観てみた

伝説の「胸糞悪い系」映画を再観賞 何といおうか……雰囲気は好きだ クリーチャーデザインは良い おススメ度:★★★☆☆ はっきり言ってしまうと、時間の都合で、今読んでいる本の感想が間に合わない。そのため …

オブ・ザ・ベースボール(円城塔/文春文庫)

一年に一回人が落ちてくる。それをバットで打ち返す人の話 不条理小説とも単純な人生の比喩とも取れる シャープな文章。怖くはないが少しだけグロイ所も おススメ度:★★★☆☆ 文學界新人賞受賞作、ということ …

暗い暗い森の中で(ルース・ウェア[著]・宇佐川晶子[訳]/ハヤカワ文庫) ~感想と軽いネタバレ

あるパーティーの夜に起こった事件。 一人の女性の視点から解かれていく謎。 人間関係(特に女性同士のもの)の怖さ。 おススメ度:★★★☆☆ ストーリーは、作家である「わたし」こと「ノーラ」のもとに、一通 …

アーカイブ