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十六人谷(まんが日本昔ばなしより/富山の伝説<24>より)~話の全容(ネタバレ)と感想

投稿日:2017年11月21日 更新日:

  • 約10分の強烈な昔ばなし怪談
  • 絵も話も怖いが「間」が最高に恐ろしい
  • 公式には見られないので詳しめのあらすじ付
  • おススメ度:★★★★★

はじめに

まず最初に断っておきたいのだが、この作品を現在、正式なルートで手に入れることはできない。某動画サイトでは、非公式に動画がアップロードされているが、あくまで非公式なのでリンクは貼れないのでご容赦頂きたい。上記の画像のセットにはもっと当たり障りのない昔ばなしばかりが収録されている。

とにかく怖いアニメ。初見から30年以上たっても脳裏に焼き付いているくらい強烈だった。なまじ子供向けのアニメと思って油断していたせいもあるが、高々10分ちょっとで語られるこの話の怖さは傑作に値すると思う。ただ、現在、公式には観られない作品なので、いつもより詳しくあらすじを書いてみたい。

あらすじ(ネタバレ)

飛騨の山奥、黒部渓谷での話。そこで木こりをやっている弥助の昔語りから始まる。

弥助は既に老人となっているが、ある小屋で若い頃の話を、若い女に向かって話しかけている。しかし、ご飯を運んできた嫁にはその若い女は見えない。

弥助の話では谷には、魔の谷があるという。魔の谷は人を寄せ付けない。例えば、山に入る時は、うわばみ(大蛇)に襲われないように山刀を持ち歩くようにしていた。しかし、弥助の仲間は山刀を持っていなかった。それが原因で、木こり小屋はうわばみに襲われ、その仲間は丸のみにされてしまう。そのうわばみの大きさは小屋を破壊するほどだった。

ここでいったん、現在の弥助に戻る。ここで重要なのは、弥助は山刀をいつも帯刀している用心深い人物であるということ。ここまでは話のプロローグで、ここから本編が始まる。女はやはり目の前にいる。

若き日の弥助。うわばみに食われた仲間の通夜で大酒を飲んだ弥助は、酔っ払って自分の家に帰って来た。そこへ、若くてきれいな女が現れ、明日、谷にある柳の木だけは「切ってくれるな」と、一方的に重ねて頼んで帰って行った。

翌日、15人の仲間と共に、くだんの谷に入った弥助。そこには立派な柳の木があった。弥助は女の言葉を思い出し親方たちに木を切らないように懇願するが、若造の弥助の話は全く聞き入れられない。柳の木は数百年も経ったような見事な木で、みんな、大喜びで切り倒した。

その夜。木こり小屋に戻った弥助たちは正体不明の眠気に襲われる。そして、ぼんやりと目を覚ました弥助はあの女をみる。気を失った弥助が意識を取り戻して見たものは……。

ズルズルという音と共に、男の口を吸っている女。15人の仲間たちは、一人残らず、舌を引き抜かれて(女に口から引きちぎられて)死んでいたのだ。弥助も襲われるが、山刀で切り付け、命からがら村に逃げ帰る。

再び、50年後の現在の弥助。弥助の前には女が座っている。さみしい鳥の声。

そして、嫁が夕食を持ってきた嫁が見たものは、舌を抜かれて死んでいる弥助爺さんの死骸だった。

その様子はどこか「恍惚として」いたという。

感想

文字にしてみると、普通の怪談のように思えるが、この中には3つの怖さがある。

一つ目は直接的な殺害方法が「舌を吸い取って引き抜く」という猟奇性だ。絵で見ると接吻しているように見えるが、相手は絶命しており、女の口には赤い血が……ほとんどバックミュージックもなく、ズルズルという生々しい効果音。この絵と間が絶妙で、幼い子供にトラウマを植え付けるには十分なインパクトだ。白目をむいている死骸の山に恨みがましい女という恐ろしい光景が目に浮かぶ。

二つ目は女の執念深さ。なぜ、50年間も弥助が生きていたのかは分からないし、恐らく柳の精であろう女は切り倒された時点で死んでしまったはずなのだが、老人弥助の前にいるのは紛れもなくあの女である。しかも、復讐するといった感じはなく、ごくごく普通に座っている。そして一言も話さない。その物凄さは言葉にできない異様な雰囲気である。50年経って妖力を取り戻したのか、それまで何かの理由で生かしていたのか。その辺の事情が分からないのも怖い。

最後は話の不条理さ。木こりが木を切るのは当然であり、その柳の木は有名なご神木という訳でもなかった。「優しそう」という理由で勝手に弥助に頼みごとをし、それが果たされなかったからと言って、皆殺しにやってくるのである。その理屈の通用しない相手というところが、物語としては破たんしているが、怪談としては不条理性を感じて恐ろしい。世の中、理屈の通用しない相手ほど怖いものはない。弥助はちゃんと親方を止めているのである。それなのに殺されてはたまらない。

このエピソードは「まんが日本昔ばなし」の数ある怪談系エピソードでも特に有名な作品の一つ。「吉作落とし」や「飯降山」、「みちびき地蔵」等と並んで、今でもよく話題にされる。

改めて大人になって思うのは、木こりの舌というのは明確に男根のメタファーであり、その隠されたエロティシズムが、他の怪談と一線を画している要素のように思う。これが刺されて死んでいたらここまでインパクトはなかったように思う。しかもラスト、弥助は「恍惚としている」のである。表面的には、柳の木の復讐話だが、深読みすれば、男尊女卑的世界観の中で、見知らぬ女性に関わるとえらい目に遭うぞ、という戒め(?)が込められているのかも知れない。

たった10分で、そこら辺のホラー映画を蹴散らす濃密な怪談アニメになっている。猟奇性、執念、不条理、そしてエロティシズムと、盛りだくさんの内容で物語としても面白い。機会が有れば、こっそり検索してみて欲しい。

ただ、昔のアニメなので、過剰な期待は禁物である。可能なら、時は昭和、夜7時のゴールデンタイム、夜が怖い年代の小学生の気持ちで見てみて欲しい。十六人谷というストーリーで始まって、まだ「十五人しか死んでいない」という後半の怖さ……。

(きうら)


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