- スペイン語圏のホラー文芸。
- 心理的な不安からくる恐怖。
- 「存在の限界」を味わえる。
- オススメ度:★★★☆☆
【近況〜食べたもの】
つい先日、チャーハンを作ろうと思ったのですが、ピーマンがなかったのでやめにしました。チャーハンにピーマンは必要ですので。そのかわりに、チキンライスを作りました。具はタマネギと鶏肉だけです。味付けは粒胡椒とケチャップとウスターソースです。で、よく考えたら、普通のチャーハンからピーマンとニンジンを抜いたものに、ケチャップとソースをかけたらチキンライスになるなぁ。どちらも飯を炒めただけだし。
さて、ケチャップというとトマト。トマトというと、スペインの通称「トマト祭り」が今年3年ぶりに開催されたようです。私も一度参加してみたい。そういえば十年くらい前、貸し農園で作った出来の悪いトマトを握りつぶしてストレス解消したことがあります。トマトを投げつけあう祭りはストレス解消になるのかどうか。
というわけで、今回はスペインの小説を取り上げます。
【本題〜最近読んだホラー】
・エルビラ・ナバロ『兎の島』(宮崎真紀・訳)
先週、上記の本を読みました。著者はスペインの作家です。本書は表題作を含む短篇集です。タイトルに「兎」が付きますが、心はぴょんぴょんしません。どちらかというと、心がゾワゾワ、ぴえんぴえんします。
「自分の世界がまったく別の世界に置き換わってしまったかのような」(p.67)経験を味わえる短篇集です。主人公というか語り手はだいたい女性です。それほど怖くないですけど、最近のスペイン語圏の女性作家によるヒリヒリした恐怖は味わえます。
【簡単な感想】
収録された短篇をいくつか取り上げて、それの感想を書きます。
・「ヘラルドの手紙」
ヘラルドという彼氏と別れたい「わたし」のヒリヒリした心理が描かれます。舞台設定の宿が不安をあおります。シャワー室の壁にたくさんの「黒い羽虫」がびっしりと張り付いている描写は、この女性の不安感をあらわしたかのようです。この羽虫が何かは、いわずともわかるでしょう。
・「ストリキニーネ」
巨大な肢が耳から生えた女性の話。感覚の変化をするどく感じる彼女のことが読みどころです。
・「兎の島」
川の半ばにある無人島に兎を繁殖させた男の話。その島(の周囲)は瘴気が漂い汚水にまみれ、人間の死体も流れ着くところ。そして、地面にひしめきあう芋虫どもと、鳥の巣だらけの島。そんななかで育てられた兎たちは鳥のヒナをむしゃむしゃと食らうのです。果には共食いまでするグロテスクな兎たち。ぴょんぴょんしません。
・「最上階の部屋」
ホテル住み込みの従業員女性が夢を見る話。その夢とは、ホテルに宿泊している客たちの見ている夢そのものを見るのです。他人の夢を見ることから逃げるために、夜になると彼女はホテルから出ます。夜に野宿する彼女は、朝になって都市の人々の営みを知ります。そのラストの光景はなんか好き。
・「メモリアル」
語り手の彼女が母を亡くします。その日から、その母の名を逆にしたフェイスブックのアカウントが作られ、そこから彼女に投稿の通知がくるようになります。過去の家族たちの画像や音声が続々と投稿されるのです。死者からのメッセージなのか、それとも他人が亡き母を騙っているのか。亡くなった母(死者)が死んでも自分を束縛するのを自覚しつつ、彼女は母との新たな折り合いを付けようとしますが。ラストで場面は一転します。けっこうおもろこわかった。
・「占い師」
携帯電話に未来からの占いが届くという話。女性同士のいびつな関係が見えるような気になりました。
【余談〜サッカー・ワールドカップ】
さて、もうすぐ2022年サッカーワールド・カップがはじまります。個人的には、スペインがどのようなチーム状況で大会に望むのかだけを気にしてます。スペインが優勝しなければどこが優勝してもいいといつも思ってます。スペイン対日本戦は、おそらく冷静に観戦するでしょう。日本が勝ってもそれほど興奮しません。スペインの試合だけ妙に冷静になるのです。スペイン対日本戦が行われる段階で、できればスペインが決勝トーナメント進出を決めていて、余裕をもって日本と戦う試合が見たい。そうなった時に、日本の真の(?)実力がわかりますので。
ちなみに、ドイツに関してはけっこうマジで日本戦に望むでしょう。前大会で韓国に破れて敗退したドイツですので、アジアの国に同じ結果を続けて出すわけにはいかないだろうし。今回の日本代表には前大会の韓国代表のようなタフさは望めないかなぁ。初戦は引き分けがベストかなぁ。というか、もし日本が決勝トーナメントに進むということになるなら、スペインかドイツのどちらか(あるいは両方)が敗退するということを意味してるのですが。
(成城比丘太郎)