- 前作の直後から始まる正当な続編
- 引き続き刑法39条を問う
- オチは一発勝負
- おススメ度:★★★☆☆
前作も紹介しているが、今回は核心的なネタバレをしないようにしたい。以下の公式紹介文も前作の既読者が対象なのでご注意を。
シリーズ累計23万部突破! 渡瀬&古手川VSカエル男、ふたたび!
凄惨な殺害方法と幼児が書いたような稚拙な犯行声明文、
五十音順に行われる凶行から、街中を震撼させた“カエル男連続猟奇殺人事件”。
それから十カ月後、事件を担当した精神科医、御前崎教授の自宅が爆破され、
その跡からは粉砕・炭化した死体が出てきた。そしてあの犯行声明文が見つかる――。
カエル男・当真勝雄の報復に、協力要請がかかった埼玉県警の渡瀬&古手川コンビは現場に向かう。
さらに医療刑務所から勝雄の保護司だった有働さゆりもアクションを起こし……。
破裂・溶解・粉砕。ふたたび起こる悪夢の先にあるものは……。(紹介文より)
概要というより中盤までのあらすじに近いが、公式紹介文なの引用させて頂いた。
この文からも分かる通り、死んだはずの殺人鬼・通称カエル男が帰ってきた、という定番の続編ネタをいかに読ませるか、という一点に集中している。
前作の主役である小手川、その上司の渡瀬のコンビは狂言回し役に徹し、作者の考えたオチに向かって突進していく。二人は熱血&ベテラン刑事という型通りの役回りを演じ続ける。
前作は小手川が主役であり、明らかに現実味を欠いた描写があっても熱量はあった。今回も二人はよく走り回るが、上滑りしている気がする。
前作から引き継がれた残酷描写もウリだが、何だが取ってつけたようで、こちらも若干気持ち悪く感じる程度でリアリティがない。ホラー小説を読んだらホラー小説のような描写が出てきた、という感じだろうか。
残酷な方法で殺されたからと言って、その描写だけで伝えられる情報には限界がある。何か感情移入できるポイントがあればもっと違っていたはず。ただ、終盤に明かされるが、被害者に感情移入させられない事情があるのだ。
これらの要因もあり、メインテーマである刑法39条への切り込みの浅さを感じてしまう。
刑法39条 第1項「「心神喪失者の行為は、罰しない」 2項「心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する」(抜粋)
罪のない人間を殺した人間なら殺してしまってもいいのでは無いか? これは被害者の家族として当然の感情である。無罪にするとは何事か、という刑法への怒りが、全編に描かれている。それ自体は現代的なテーマだと思う。
ただ、文章とテーマの重さが合っていないように感じるシーンが多かった。最後まで乗り切れ無かったのはその為だろう。
総じて表紙の絵とは全く反対の非常に豪快な構成のホラー・ミステリだと思う。私とは微妙に趣味が合わなかったが、大オチにかける執念は感じた。
(きうら)