- 心霊系恋愛小説
- 四国の土俗的文化がベース
- ホラーとしてはおすすめできない
- おススメ度:★★☆☆☆
注・ここから先、ネタばれあり
過去に「猫殺し」の一件で話題になった坂東氏による「死国」は、死者の甦りと四国の土着文化をテーマにしており、文庫本の帯では「伝奇ロマン」と紹介されていた。問題はこの伝奇とロマンの比重だが「ほとんどロマン」といった感じで、三角関係がテーマの恋愛物になっている。
この三角関係の一角が死人という点がこの本の売りだと思うのだが、女性の愛憎渦巻く恋愛物のようで、見事に肩透かしを食らった感じ。また「霊魂が存在する」ことが前提になっているので、リアリティを欠く。
死者の甦り系のお話として「猿の手」という古典的なお話がある。死者への切ない思いと冒涜行為が交錯して悲劇的な結末を生む、というのが基本的なプロットだ。この「死国」もそういった要素もあるが、甦った死者が取った行動が「ヒロインとの男の取り合い」な所が、トホホ感いっぱいで「けっきょく痴話喧嘩かよ!」と、思わず突っ込んでしまった。
テーマである四国の土俗的文化についても、それほど突っ込まれておらず、中途半端感は否めない。期待して読んだだけに、どうにもお薦めしにくい一冊というのが今回の感想だ。
(きうら)
![]() 死国 [ 坂東眞砂子 ] |