- 製糸工場に売られた12歳の少女が体験する恐怖
- 湿った雰囲気にキモイ描写、そしてロリータ趣味。
- かなりのグロさ。読んだことを後悔する。
- おススメ度:★★★☆☆
主人公のお初は架空の寒村に住む12歳の少女。貧しさ故に製糸工場に働きに出る。工場は常に品質の高い糸で経営が安定しているが、そこには恐ろしい秘密があった…というのが、導入部だ。「あゝ野麦峠」や「女工哀史」を思わせる設定に、ホラー要素が混ざって湿り気のある独特の陰鬱な雰囲気が特徴。
話のオチがすぐに分かるとか、第17回ホラー小説大賞にしてはツマラナイなどの批評が蔓延しているが、私は「読んでいけないものを読んでしまった」感があって、中々不気味で素晴らしいと思う。謎を解くというより、いつ「それ」が来るのかと思うと、ページを繰る手が止まらない。とにかく、グロテスクで救いがない。
現代でもブラック企業と呼ばれて厳しい労働環境が取り沙汰されることがあるが、仕事というものは、一歩間違えればこの小説のような暴走を招くもの。上記の「あゝ野麦峠」や「蟹工船」なども、見方を変えればリアルなホラーと言えなくもないと思う。
終盤、ある登場人物の名前に少々違和感を感じるのと、雰囲気に比べセリフが軽い気もするが、全体的には読みやすくて明瞭だ。ロリータ趣味的な描写も多いので、そういう趣味の方の興味も満たされるのではないかと思う。
(きうら)
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