3行で探せる本当に怖い本

ホラーを中心に様々な作品を紹介します

★★★☆☆

お初の繭(一路晃司/角川ホラー文庫)

投稿日:2016年12月22日 更新日:

  • 製糸工場に売られた12歳の少女が体験する恐怖
  • 湿った雰囲気にキモイ描写、そしてロリータ趣味。
  • かなりのグロさ。読んだことを後悔する。
  • おススメ度:★★★☆☆

主人公のお初は架空の寒村に住む12歳の少女。貧しさ故に製糸工場に働きに出る。工場は常に品質の高い糸で経営が安定しているが、そこには恐ろしい秘密があった…というのが、導入部だ。「あゝ野麦峠」や「女工哀史」を思わせる設定に、ホラー要素が混ざって湿り気のある独特の陰鬱な雰囲気が特徴。

話のオチがすぐに分かるとか、第17回ホラー小説大賞にしてはツマラナイなどの批評が蔓延しているが、私は「読んでいけないものを読んでしまった」感があって、中々不気味で素晴らしいと思う。謎を解くというより、いつ「それ」が来るのかと思うと、ページを繰る手が止まらない。とにかく、グロテスクで救いがない。

現代でもブラック企業と呼ばれて厳しい労働環境が取り沙汰されることがあるが、仕事というものは、一歩間違えればこの小説のような暴走を招くもの。上記の「あゝ野麦峠」や「蟹工船」なども、見方を変えればリアルなホラーと言えなくもないと思う。

終盤、ある登場人物の名前に少々違和感を感じるのと、雰囲気に比べセリフが軽い気もするが、全体的には読みやすくて明瞭だ。ロリータ趣味的な描写も多いので、そういう趣味の方の興味も満たされるのではないかと思う。

(きうら)


お初の繭【電子書籍】[ 一路 晃司 ]


-★★★☆☆
-, , ,

執筆者:

関連記事

ホーンテッド・キャンパス(櫛木理于/角川ホラー文庫)

ラブコメ+軽いオカルト 衒学趣味的要素もある こういう軽さも必要かも知れない おススメ度:★★★☆☆ 本作はいわゆるライトノベルに属する作品である。大学のオカルト部が舞台。いかにもな気弱だが霊感のある …

騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編(村上春樹/新潮社) ~あらましとモヤモヤした感想、軽いネタバレ

結局、上手く騙された感じがする とにかく性的メタファーの多い後編 誰かに勧めるかといわれると勧めない おススメ度:★★★☆☆ 第1部を読んだのが3月で、今が7月なのでそれから第2部を読み終えるのに4か …

隣の不安、目前の恐怖(アンソロジー/双葉文庫)

「日本推理作家協会賞受賞作家短編集」 隣人や家族における、不安や恐怖または異変 まあまあのおもしろさ おススメ度:★★★☆☆ アンソロジー(異なる作家の作品をテーマ別などでまとめたもの)を読むおもしろ …

最近読んだ本などについて[2018年11月]~読書メモ(022)

   読書メモ(22) 最近読んだ本について 海外文学から新書まで おススメ度:★★★☆☆ 【はじめに】 今回は、穴埋め的なものとして、主に図書館で借りてきた本を中心に備忘録的なものを書きたいと思いま …

踊る男 (赤川次郎/角川文庫) ~あらましと感想

33篇のショートショートミステリ アイロニーとユーモアに溢れる 一番古い話は1979年に朝日新聞に掲載 おススメ度:★★★☆☆ 軽く洒脱な文章で名を成した赤川次郎による、さらに軽さを増したショートショ …

アーカイブ