★★☆☆☆

つばめや仙次 ふしぎ瓦版(高橋由太/光文社)

投稿日:2020年4月13日 更新日:

  • 本当に不思議な小説
  • 薬種問屋の次男坊のえーと
  • 久しぶりによく分からない
  • おススメ度:★★☆☆☆

江戸を舞台に、本所深川の薬種問屋つばめやの道楽息子・仙次の活躍(?)を描く。彼は怪しい話専門の瓦版売りで、本業は無視して生きたいように生きている。友人に剣術使いの梶之進(かじのしん)がいるが、冒頭はその友人に木刀で殴られるシーンから始まる。その理由は、二人の幼なじみのお由有(おゆう)を泣かしたから……んん? この辺で早くも話の方向性が分からず、混乱を来してしまった。あだち充の「タッチ」じゃあるまいし、どういう話なんだと感じた。

タイトルからすれば、少し軽めの怪談話、例えば畠中恵の「しゃばけ」や緑川ゆきの「夏目友人帳」を想像していた。ところが、これが全く妖怪も物の怪も出てこない。

もちろん、事件は起こる。それは「拝み屋」を名乗る怪しい男、八兵衛の「武家の子供を生き返らせる」という騒動だ。基本的にはこの「蘇り」の謎を解くというのがメインのストーリーライン。一応オチもつくし、文章が読みにくい訳ではないのだが、何と言おうか「何についても熱心に語られない」のである。怪談も剣術もミステリも人情噺も盛り込まれているのだが、そのどれもにも傾かない。ひたすら、ゆらゆらと焦点の定まらない「事件」が進んでいく。

例えば、梶之進は剣を抜くと必殺技の名前を叫んだりする。その梶之進と仙次とお由有の三角関係を描くかと思ったら、肝心のヒロインがただのアイコンなのだ。かと言って謎解きはもう始まった辺りからネタは割れるし、お由有の父・医者の宗庵もよく分からない人情家設定。仙次は一人称が「あたし」で、一応ホームズ役なのだが、別に鋭い推理もしないしそれ程切れ物とも思えない。

そんな訳で、何に感情移入していいか迷ってうちに読み終わってしまった。かと言って、読みたくないほど投げやりな文章でもないし、どうにも中身を掴めずに今も何と紹介しようか呻吟している。Amazonの評価はそれなりあり、余計に悩む。

ここで、作者をググってみると、歴史小説家という説明があり、ホラー小説大賞に応募したりして、一応私の好みからすれば的は外れてないと思うのだが、いまだにピンとこない。「感想が無いのか感想」というのもレビュアーとしては悔しいところである。

とは言え、この身の入らない読書感、というのも貴重と言えば貴重だとは思うので、取り上げてみた。車で言えば何の売りも無い無難な車のようで、敢えて不満も感じないが、別に欲しいとも思わないだろう。今現在、世間がウイルスで揺れているいま、こんな本を読んでていいのかどうか、少し心配になってしまった。

ただ、タイトル通りふしぎな気分ではあるので、★2とした。貶すにも褒めるにも、何とも気が入らないのはこの文章から読み取って貰えたらありがたい。まあ、長所はすごく読みやすいことか。

(きうら)


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