★★★★☆

Q&A(恩田陸/幻冬社)

投稿日:2017年1月21日 更新日:

  • タイトル通り「質問」と「答え」だけで構成される小説
  • 正体不明の大惨事が多数の視点から描かれる
  • オチは弱いがゾッとする恐怖を味わえる
  • おススメ度:★★★★☆

作者のデビュー作「六番目の小夜子」に続いての紹介となる本作は、あるショッピングセンターで起こった大惨事(死者69名、負傷者116名)をめぐる物語だが、タイトル通りQ&A形式(質問とその答え)で進み、一般的な小説にある場面描写などがない。

とはいえ、それほどトリッキーな印象もなく「正体不明の大惨事」という興味深いテーマがあるので、序盤から引き込まれる。次第に質問者と回答者も変化すが、一つひとつのシーンが短編小説風にラストに落ちがつくので、単調な印象もない。

物語が動くのは中盤からで、ネタバレになるので詳しくは書けないが、通常のサスペンスと逆方向に物語が転回する。この「Q&A」は物語が収束するのではなく、拡大していく。読んでいる時はそれほど分からなかったのだが、読み終えて振り返ってみると、作者の狙いがよく分かった。

一言で言えば、一つの惨事から拡大再生産されていく恐怖、これこそ、この小説のテーマかなと思う。これは現実社会にある恐怖に近く「何となく不安」な気持ちがどんどん積み重なっていくようで、新鮮な感覚だった。

惜しいのはラスト、結末が弱いと感じるし、あの設定は必要なかったようにも思う。どちらにしても、水準以上の「ぞっとするような恐怖」を味わえるので、一度手にとってみてはどうだろうか。

(きうら)


Q&A【電子書籍】[ 恩田陸 ]


-★★★★☆
-, ,

執筆者:

関連記事

引き潮(R・L・スティーヴンスン&ロイド・オズボーン[著]、駒月雅子[訳]/国書刊行会)~あらすじと感想

タヒチにくすぶる三人組。 海に出た三人組のとある計画。 ある島で彼らが出会う強大な人物。 おススメ度:★★★★☆ 著者のスティーヴンスンは、先日紹介した『ジーキル博士とハイド氏』の作者で、ロイド・オズ …

現代の地獄への旅(ディーノ・ブッツァーティ、長野徹[訳]/東宣出版)~読書メモ(28)

読書メモ(028) ブッツァーティ未邦訳短篇集第二弾 日常に潜む陥穽と幻想と おススメ度:★★★★☆ 【はじめに】 本作品は、一年ぶりのブッツァーティ短篇集。内容は、変身譚・復讐譚・昔話のようなノリな …

アニメに出てくる本(1)

アニメに登場する書物。 これもまた不定期更新です。 今期[2017年夏]の『NEWGAME!』に出てくる本を中心に。 オモシロ度:★★★★☆ アニメに書物が出てくると、その内容とは別の意味でうれしくな …

この世界の片隅に(片淵須直〔監督〕/アニメーション映画)

日常というものを、戦前戦後という地平で連続的に描く 偶有性を帯びて見える「すず」さん 声優から楽しむ「この世界の片隅に」 おススメ度:★★★★☆ ようやく観ました、『この世界の片隅に』を。私はミーハー …

タタール人の砂漠(ブッツァーティ[作]、脇功[訳]/岩波文庫)

語の舞台である砦に捉われた人々。 幻の敵を待ち続けるドローゴ。 人生の寓話として読むもよし、幻想小説として楽しむもよし。 おススメ度:★★★★☆ 将校の「ジョヴァンニ・ドローゴ」が、九月のある朝、任地 …

アーカイブ