3行で探せる本当に怖い本

ホラーを中心に様々な作品を紹介します

★★★★★

残穢 (小野不由美/新潮文庫) ~あらすじとそれに関する軽いネタバレ、感想

投稿日:2017年3月12日 更新日:

  • 実際起こった怪異の謎を追うドキュメントタッチの構成
  • 心霊や呪いを信じるタイプの方は、絶対読まない方がいい
  • 展開は地味だが、リアリティ抜群
  • おススメ度:★★★★☆(あるいは☆☆☆☆☆

久々に「ヤバい」系の怖い本で、久しぶりに直球で怖いと言える一冊だ。しかも、あるタイプの人間には非常に危険だ。この本を読んだことを後悔するだろう。あえて(☆☆☆☆☆)と併記したのは、この本に合わない人には絶対に勧めたくないからだ。たぶんその人に恨まれる。実は書店で店員さんに勧めて頂いたのだが、私自身は後悔はしてないし、勧めてくれたことも感謝している。

内容の骨子はシンプルだ。この本の著者である小野不由美氏が一人称の語り手で、ある人から「部屋から変な気配や床を擦る音がする」という相談を受け、その原因をたどっていくというスタイルだ。残酷な描写も多少はあるが、ほとんどは「調査」なので、スリル、サスペンスなどを求める方には不向きだ。

この本の真骨頂は「リアル」である点だ。怪談のある一つの手法で書かれているが、この本に書かれている内容は、現実としか思えないように書いてある。それがフィクションなのかノンフィクションなのか、本当に知ることは難しいが、たぶん、作り話要素は余りないと思う。

著者の作品は「屍鬼」という作品と「十二国記」の一巻しか読んでなかったが、「屍鬼」は怖いというよりラノベっぽいと思ったし、ファンタジーは大好きだが「十二国史」の世界観は自分には合わなかった。だから、余計に油断していたせいもあるが、まさかこんな風に「仕掛けて」来るとは思わなかった。

何が「怖い」かを説明すると、この本の面白さが損なわれるので、上記の説明からだいたい察して頂ければと思う。ある種の人は「怖いこともないけど地味」というかもしれないし、別の人は「今すぐ本を捨てたい」と思うかもしれない。スプラッター要素等もないので、その辺は心配ないが……。

結論として勧めていいかどうか迷うが、ホラー好きなら読んで損はないと思う。でも、絶対に勧めた私を悪く思わないで欲しい。

(きうら)


残穢(楽天)


-★★★★★
-, ,

執筆者:

関連記事

海豹島(久生十蘭/ゴマブックスor青空文庫) ~あらすじメイン・一部ネタバレあり

絶海の孤島での、ミステリ的挿話。 読みやすい文章。 かなしげなラスト。 おススメ度:★★★★★ 舞台は、「樺太の東海岸、オホーツク海にうかぶ絶海の孤島」である「海豹島」。時は大正元年三月、「樺太庁農林 …

風の谷のナウシカ(1)~(7)(宮崎駿/徳間書店)

アニメ版の後の長大な物語 残酷な死や直接的な戦闘描写 アニメ版ナウシカを少しでも好きな方は必読 おススメ度:★★★★★ いつもはなるべく客観的に怖い本を紹介しているが、今回はほぼ、自分語りに近いものだ …

この世界の片隅に 上・中・下(こうの史代/アクションコミックス)

第2次世界大戦前後の広島の日常生活が緻密に描かれる 主人公すずの天然で健気なキャラに癒される 直接的な暴力もあるが、それとは違う「怖さ」がある おススメ度:★★★★★ この作品の素晴らしさは各所で語り …

ドラゴンランス戦記 (1) (マーガレット・ワイス(著)、トレイシー・ヒックマン(著)、安田均(翻訳)/富士見文庫)

完成されたファンタジー娯楽大作 魅力的なキャラにスリリングな展開 あえて書けば、全てのラノベの原点的存在 おススメ度:★★★★★ こんな古い本(昭和62年初版)を引っ張り出して批評するサイトも今は少な …

武装島田倉庫(椎名誠/新潮社)~あらすじとそれに関する軽いネタバレ、感想

崩壊後の世界で働く男のSF小説 短編7つで一つの小説になっている とにかくアツくて独特で魅力的。大好きです! おススメ度:★★★★★(普通の人には★★★~★★★★くらい?) 個人的なことで恐縮だが、こ …

アーカイブ