★★★★★

武装島田倉庫(椎名誠/新潮社)~あらすじとそれに関する軽いネタバレ、感想

投稿日:2017年3月19日 更新日:

  • 崩壊後の世界で働く男のSF小説
  • 短編7つで一つの小説になっている
  • とにかくアツくて独特で魅力的。大好きです!
  • おススメ度:★★★★★(普通の人には★★★~★★★★くらい?)

個人的なことで恐縮だが、この本の紹介でちょうど100冊目の紹介になるので、今回はちょっと私のワガママで「一番好きな本」を紹介、というか絶賛したい。だから客観的ではない「ファンレターみないなもの」なので、冷静な批評はAmazonのレビューなどをご参考に。ちなみに「怖い」要素は少なめだ。

まず、私は椎名誠氏の大ファンである。だから今回だけ、以降「氏」ではなく「先生」と書く。著作の多い方だが(ちょっとググると844冊と出てきた!)その70%以上は読んでいる自信がある。代表作はもちろんすべて読んだ。もともと椎名先生は商業新聞の編集者からスタートし、エッセーでデビューされた。前にも書いたが、その後、エッセー、SF、私小説と3つのジャンルに傑作を多数残されている。そのSFの中で、もっとも優れている小説がこの一冊だ。

あらすじ-何かの戦争で「北政府」に負けて崩壊後した日本らしき世界。そこで、この小説の主人公たちは壊れたビルに住んだり、変な生き物に襲われたりするが、逞しく「仕事」をして生きている。7つの短編小説が合わさって一つの長編小説になっている構造で、それぞれが微妙に関連しているというのがミソだ。ある場面では、別の場面の主人公がわき役として出てくる。

一番の魅力は「男の生きざま」と「心意気」だ。現代日本と比べると、酷く不便で食べるにも困るような世界で、それを「悲観」も「楽観」もしない男たちが、淡々と「働く」のである。海は油まみれ、人口激減、「北政府」の支配下、怪しい集団や生き物が襲ってくる、そんな状態でただ、淡々と生きている人々の姿が描かれているのだが、そこに痺れるのだ。
そもそも最初の一遍は「倉庫の管理業務」に就職する男の話から始まるのである。ナンダナンダと思っていると、パターンを変えて色んな「仕事」が出てくる。「倉庫業務」は、椎名先生の実体験に基づくものであるが、リアル且つSFになっているのが不思議だ。

もう一つ、独特の、あるいは意味の分からない単語が多数登場するが、それが非常に面白い。「魚乱+魚歯」という造語で「カミツキウオ」と読むのをはじめ、「炸裂カンノン銃」「三足踊り豆」「眼鏡踊り子製菓の『ほじほじくん』」「旧式の九足歩行機『カニムカデ』」等々。詳しい説明のない場合も多いが、私など、その単語を聞くだけでワクワクする。この命名センスは唯一無二だ。ただし、必ず順番に読むこと。

特に5つ目のエピソード、「肋堰夜襲作戦(あばらだむやしゅうさくせん)」がおススメだ。この短編のラストには心が揺さぶられる。「フーゼル」という名前の人物がいるのだが、彼が実に魅力的だ。きっとここで、「あっ」と思う人も多いだろう。どれも素晴らしい短編だが、とにかく面白いエピソードだ。
上記のように造語が羅列されるので、読みにくいかも知れないが、その分、何度読んでも新しい発見がある。もう20回以上読み直したが、未だにそのディティールに感動することがある。それほど、魅力的な世界なのだ。

変な意味ではなく「男が男に惚れる」そんなアツイ一冊。SF嫌いの方もそうでない方も、未読の方は騙されたと思ってぜひ、ご一読を!

以上、100冊目の「絶賛」でした。この作品の直接の続編はないが、同じ世界を舞台にしたと思われる小説は「銀天公社の偽月」など、多数書かれているので、よければそちらもどうぞ。
椎名先生の今後を活躍を心よりご祈念いたします!

(きうら)

追記:表紙が新(下のAmazonの画像)と旧(下の楽天の画像)の二種類あるが、旧の方が好き。新版は漫画化された際の作者が描かれているが、旧版の方がイメージが固定しないのでいいと思うので、変な話だが、古本版の方がいいと思います。


(楽天)


-★★★★★
-, ,

執筆者:

関連記事

新版 指輪物語〈1〉旅の仲間 上1 (J.R.R. トールキン (著)/田中明子 (翻訳)/評論社文庫) ~あらすじと感想

現代ファンタジーの元祖ともいえる偉大な名著 弱きものが勇気で悪を撃つ感動の物語 「読みにくさ」は万人の認めるところ おススメ度:★★★★★ 一般的には、映画「ロード・オブ・ザ・リング(Ama)」と知ら …

13階段(高野和明/講談社)

スリリングな展開と深いテーマ性 受刑者と元刑務官という新鮮なコンビ 予備知識なしで読むのが最適 おススメ度:★★★★★ 無実の罪で死刑が迫っている受刑者を救う為に、あることから殺人に及んでしまった青年 …

風の谷のナウシカ(1)~(7)(宮崎駿/徳間書店)

アニメ版の後の長大な物語 残酷な死や直接的な戦闘描写 アニメ版ナウシカを少しでも好きな方は必読 おススメ度:★★★★★ いつもはなるべく客観的に怖い本を紹介しているが、今回はほぼ、自分語りに近いものだ …

夜と霧 新版(ヴィクトール・E・フランクル (著)・ 池田香代子 (翻訳)/みすず書房) ~感想と紹介

ナチスの強制収容所に収容された心理学者の冷静な回想 読むと非常に重い現実が現れる。娯楽要素はゼロ 誰もが絶対に読むべき本だと私は思う おススメ度:★★★★★ 皆さんは、人間の「性善説」と「性悪説」とい …

海豹島(久生十蘭/ゴマブックスor青空文庫) ~あらすじメイン・一部ネタバレあり

絶海の孤島での、ミステリ的挿話。 読みやすい文章。 かなしげなラスト。 おススメ度:★★★★★ 舞台は、「樺太の東海岸、オホーツク海にうかぶ絶海の孤島」である「海豹島」。時は大正元年三月、「樺太庁農林 …

アーカイブ