3行で探せる本当に怖い本

ホラーを中心に様々な作品を紹介します

★★★★☆

拝み屋郷内 花嫁の家拝み屋(郷内心瞳/MF文庫ダ・ヴィンチ)

投稿日:2016年12月12日 更新日:

「拝み屋」を営む著者の実話怪談集

魅力的な登場人物と秀逸なストーリー

単なる実話系会談集の枠を超えた傑作

おススメ度:★★★★☆

憑き物落としや安全祈願などを生業とする拝み屋を営む著者が、自らの奇怪な体験をまとめた実話系の怪奇譚。「花嫁が必ず死ぬ」という旧家と著者の関りが「花嫁の家」「母様の家」という二つの連作を通して語られる。

本作は「実話系」の会談集の系譜ではあるが、いわゆる「本当にあった怖い話」とは決定的に違う点がある。全体に大きなストーリーが流れていてる点と、著者をはじめ師匠の拝み屋や依頼者など、確立されたかキャラクターが存在している点だ。それによって、単なる会談の寄せ集めではなく、一つの小説として完成されている。

「花嫁の家」「母様の家」という二つの連作が互いに深く関連しながら、ストーリーは時間や空間を超えて想像もしない方向に延びていく。怪談の枠を超えた人情話や謎解き、果ては拝み屋同士のバトル要素まで、実に多彩だ。こんなパターンをたどる怪談は読んだことがなく、読み慣れていればいるほど意表を突かれるだろう。

お話としても大変面白いし、文章も読みやすい。ちょっと大げさかもしれないが実話系会談の新しい可能性を感じた。

ちなみに著者は2016年の12月現在、この作品以外に3篇の著作を発表している。どれも面白いが、私はこの「花嫁の家」が一番だと思う。

(きうら)


拝み屋郷内 花嫁の家【電子書籍】[ 郷内 心瞳 ]


-★★★★☆
-, ,

執筆者:

関連記事

ルクンドオ(エドワード・ルーカス・ホワイト、遠藤裕子[訳]/ナイトランド叢書)

著者が見た夢(悪夢)をそのまま書いたという作品群 わかりやすいものから不気味なものまで 内容の唐突さが、たしかに夢を見ているよう おススメ度:★★★★☆ 【はじめに】 著者は、アメリカ出身で、怪奇小説 …

レオン 完全版 (リュック・ベッソン監督) ~あらすじと感想

孤独な殺し屋と不幸な少女の純愛ストーリー リュックベッソン奇跡の一本 主演二人の出世作 おススメ度:★★★★☆ 最近、やたらと古い映画が観たくなる。先日は「Shall we ダンス? [DVD]」なん …

千と千尋の神隠し(宮崎駿/スタジオジブリ) ~あらすじと軽いネタバレと怖さの構造

いわずと知れた摩訶不思議な和風ファンタジーの傑作 ホラー要素満載で悪意しか感じない展開 しかし「超」天才の限界を感じる作品 おススメ度:★★★★✩ 「君の名は」や「アナ雪」や「タイタニック」を足蹴にす …

失踪日記(吾妻ひでお/ イースト・プレス)短評

人気漫画家の突然の失踪の顛末 その筋では有名なアル中体験記 アルコールは是か非か おすすめ度:★★★★☆ 今回も個人的な時間の都合で短文になるがお許し願いたい。ホラーも読んではいるのだが、感想として出 …

魔法にかかった男(ディーノ・ブッツァーティ〔著〕、長野徹〔訳〕/東宣出版)

ブッツァーティ短篇集1 寓話としても読めるし、現実的な話としても読める しずかに忍び寄る不安や恐怖が味わえる、かも おススメ度:★★★★☆ 昨年末、新たに掘られた鉱山に、いくつかの展示がなされたという …

アーカイブ