★★★★★

ウェンディゴ(アルジャーノン・ブラックウッド/ナイトランド叢書)

投稿日:2017年4月11日 更新日:

  • 大自然の脅威や、不可視の霊威を感じ取れる怪異譚(かいいたん)
  • 読みごたえのある3つの中編
  • クトゥルー(クトゥルフ)神話を知らなくても楽しめる
  • おススメ度:★★★★★

イギリスの怪奇作家、ブラックウッドの傑作集。表題作の「ウェンディゴ」では、四人の狩猟隊がカナダの森林で遭遇した怪異の顛末(てんまつ)がえがかれる。その怪異は自然の大いなる畏怖すべき力のあらわれのようなものか。取りつかれたものは、それと一体化しやがて衰弱死を迎えるという…。

陽が落ちた後の自然のおそろしさが圧倒的な恐怖とともにおしよせる。この〈ウェンディゴ〉とはクトゥルー神話での〈イタカ(Wiki)〉のことだという。東雅夫(Wiki)『クトゥルー神話事典』(学研)によると「北米原住民が畏怖する〈ウェンディゴ〉はイタカのことであるといわれる」とある。

2作目の「砂」では、エジプトに惹かれた主人公が、砂のもつ力に導かれる。かれはその地で一組の男女と出会う。二人はエジプトの力のもととなる霊身を召喚しようとしており、かれを儀式にひきいれようとする。かれはその誘いに抗いきれず…。

最後の「アーニィ卿の再生」は「ウェンディゴ」とも少し関わる一編。生気のない若者が、フランスの山奥に住まう山の民が崇拝する火の魔力と、かれらの熱狂にあてられ、やがて若者自身が熱を帯び躁状態に…。

どれもエンターテイメントとして楽しめます。「ウェンディゴ」には自然の闇にひそむ恐怖の源を感じました。「アーニィ卿の再生」では、狂熱を宿したアーニィ卿に、読んでいるこちらのテンションもあがり気味でした。

著者補注追記(20170411)
ブラックウッドはクトゥルー神話の作家でなはない。ウェンディゴもクトゥルー神話体系に入ってるわけではないようだ。クトゥルー神話に影響を与えはしたが。

(成城比丘太郎)

編者補足:(ウェン)ディゴと聞くとブラックジャックの「ディンゴ」というエキノコックスのエピソードを思い出したが、関係ないか。クトゥルフ神話は少なくとも30年前以上前にも流行したが、最近も「這いよれ!ニャル子さん (Ama)」などでも題材にされている人工神話です。ラブクラフトもたぶん、死んでから萌えアニメ化されるとは、びっくり仰天でしょう。


(楽天)


-★★★★★
-

執筆者:

関連記事

フランケンシュタイン(メアリー・シェリー、芹澤恵[訳]/新潮文庫)

「怪物」とは何かを考えながら読むと面白い 怪奇小説の古典だが、文学的にも読める 科学主義の時代を告げる作品か おススメ度:★★★★★ 【前口上】 『フランケンシュタイン-あるいは現代のプロメテウス』は …

伊達政宗 (1) 朝明けの巻 (山岡荘八/講談社)

高名な伊達政宗の誕生から最初の挫折まで 読みやすく、かつ、中身が深い 読み物として単純に面白い おススメ度:★★★★★ まず、言い訳がある。言い訳なので、回りくどいのが嫌な方はこの段落は飛ばして欲しい …

『ゆるキャン△』がパワーアップしてかえってきた

『ゆるキャン△(二期)』が 最高で、素晴らしすぎて もう死にそう ほっこり度:★★★★★ 【最新11巻の感想】 コミック『ゆるキャン△』の最新11巻をよみました。静岡県の大井川周辺での、三人の観光キャ …

シークレットレース(タイラーハミルトン/小学館文庫)

自転車レースの裏側、ドーピングを語るノンフィクション 偉大なチャンピオンの転落劇を生中しく語る 暴露本だが感動する。みんな必死なんだ。 おススメ度:★★★★☆ 自転車レース。今回は、競輪のことではない …

ベルセルク 1(三浦建太郎/ヤングアニマルコミックス) ~ベルセルクの今と昔(前編)

過酷な運命を背負った若者を描くファンタジー エロ・グロ・ロリータなど必要と思えば何でも描く 3巻~13巻は間違いなく傑作 おススメ度:★★★★★ (あらまし)人間を超えた存在から、ある運命によって常に …

アーカイブ