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深夜特急1―香港・マカオ―(沢木耕太郎/新潮文庫)

投稿日:2021年2月22日 更新日:

  • 1986年5月に刊行された突撃海外旅行記
  • 当時としては非常に斬新なノンフィクション
  • 若さ、ただ、それだけを今を感じる
  • おススメ度:★★★★★

沢木耕太郎(Wiki/1947年11月29日・生)は2021年2月現在、74歳。そうか、その事実にまず衝撃を受ける。自分の中で「深夜特急」の中の沢木耕太郎は永遠の26歳なのだ。本書の刊行年は1986年。私がまだ青年期だったわけだ。読んだのは、当時、それから10年くらいあと。とにかく、衝撃を受けた。人間は旅に出ないといけない。狭い世界で満足をしてはいけない。これは絶対だ。そんな信仰を植え付けるには十分な作品。飛び出していこう、世界に。

本書1巻をいま、再読した現在も、同じ心境にある。どうして自分は日本にいて、十分満足とは言えない仕事に就いて、予測とは違うルーティンワークを繰り返す人生を生きてのか、困惑している。どうしてこの著者のように自由に世界を渡っていかないのだろうか?

引用すれば、こういう感じになる。

インドのデリーから、イギリスのロンドンまでを、バス(特に路線バス、高速バスなどの乗り合いバス)だけを使って一人旅をするという目的で日本を飛び出した主人公「私」の物語であり、筆者自身の旅行体験に基づいている。Wikipediaから引用すれば、

当初は日本からデリーまで直行してしまうつもりだったが、途中2か所のストップオーバーが認められる航空券を手にした私は香港とバンコクを選び……。様々な人々と事件に出会いながらロンドンを目指す。

となる。要するに金のない若者が60万くらい(当時の通貨)ほど持って、世界を行き当たりばったりで旅するというノンフィクションである(適当)。

スマホはない。携帯電話もない。ハザードマップすらない。そんな世の中を、何も考えず、自由闊達にわたっていく26歳の沢木耕太郎の清々しさ。ギャンブルにはまる、売春宿に(なにもしないけれど)泊まる、現地の少年の矜持に感動する…全てが行き当たりばったりのようで、全てが予定されていたようなそんな面白さが満載のシリーズ6作品である。

とにかく、旅に出なくてはならない。そう思わせられるだけの情熱に満ちた文章、圧力、憧憬…ほかに何があるだろうか。

本書は1986年に書かれた最高に面白いアジア~ヨーロッパへの行き当たりばったりのバックパッカーの旅行記、という以上の説明は必要ないだろう。私の中では、もはや聖典に近い扱いである。

もう26歳に戻ることもないし、1986年にタイムスリップできることもない。本書に登場する国々もめまぐるしく発達したであろう。世界はGoogleMapで見渡せる世の中だ。じゃあ、私は何のために本書を読んでいるのだろう。

これは、永遠のパッションへの信仰である。若ければ何でもできる、分ければ失敗を恐れずに生きられる、そんな「ファンタジー」を体現してしまった男の伝記なのである。

いま、年齢的に作者も老齢にある。同じことは絶対にできないだろう。さらにこのコロナ禍の世の中、本書は桃源郷の描写にすら思える。

いま、ここにいない自分をどこかに連れていきたいなら、この本を読むべきだ。私は思う。自由とリスクと若さと、生きることについて。

(きうら)


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