3行で探せる本当に怖い本

ホラーを中心に様々な作品を紹介します

★★☆☆☆

ケモノの城 (誉田哲也/双葉文庫) ~あらましと感想

投稿日:2017年7月6日 更新日:

  • いわゆる一つの胸糞悪いはなし
  • 実在の事件を材に取ったというか、ほぼそのままの気が
  • よほどのサディストでもない限り読まないほうが良い
  • おススメ度:★★☆☆☆

本を定価で買って久しぶりに後悔した。むろん、中身の中途半端さもさることながら、これは私の知っている実在の事件をなぞっているだけだと分かったからだ。ネタばらしになるので、一応ぼかして書いておくが、この事件を例にとったのは間違いない。何しろ、参考文献の最初にこの名前が出ている。私の記憶している限りでは、ほぼそのままの内容ではないのか。タイトルからして、映画「SAW」のようなサスペンスホラーを期待したのだが、何のことはない、虐待とマインドコントロールの様子を描いた胸糞ホラーそのものだ。ジャック・ケッチャムの「隣の家の少女」を想像してもらうと分かりやすい。

(あらまし)自動車工場に努める若者のところに、その父親という謎の男が転がり込んでくる。同時に、ひどい虐待を受けた女が警察に保護される。そこから明かされる彼女たちが受けた虐待の数々。それはまさに「ケモノ」の所業と言える鬼畜行為だった。小説は主にこの鬼畜行為と、犯人探しが交互に展開するような構成になっている。

私もこんなサイトを運営しているくらいなので、日本の主な殺人事件は一通り知っている。その中でも、二度と詳細を読みたくないのは、上記の事件なのである。まさに自分でお金を払って地雷を踏みに行ってしまった。私がこういった暗い事件への興味を駆り立てる理由は、多少のサディスト気質はあるものの、おそらく人間がどこまで残酷になれるかを知っておきたいという、一種の防衛本能からだ。人間、知っている恐怖はそれほど怖くはない。事実私はお化け屋敷にも入れない大変な怖がりだった。今では一通り人間の暗部を理解したつもりでいるが、この事件は無理だ。一人の人間が残虐になるのはまだ、理解できるが他人をコントロールする系はだめだ。吐き気しかしない。

オウム事件やアウシュビッツを例に出すまでもなく、ある程度のマインドコントロールが進むと、人間は果てしなく残酷に振舞うことができる。それはもう、常識では考えられないくらいだ。幸い、それを自分で実感する機会はないのだが、自分がそうならないという保証はどこにもない。前にも書いたが、我々は底なしの深い暗い海を漂っている小舟のような存在だ。ひとたび、海に投げ出されれば、死ぬまで沈んでいくしかない。それを飛び込んで助ける人もいるが、好んで船をひっくり返す人もいるのだ。努々油断するなかれ。生きるというのは常に戦いであると、ホラーなどを読むとよく思う。

ホラー小説としては、確かにある程度機能しているので、★は2つにしたが、別に上記の事件を知っているなら、わざわざ買って読む必要はない。小説より現実のほうが酷い話なのだから。

(きうら)



ケモノの城 [ 誉田哲也 ]

-★★☆☆☆
-, ,

執筆者:

関連記事

急いで喉を裂け~駕籠真太郎ホラーエクスタシー短編集(駕籠真太郎/Kindle版) ~紹介と感想、一部ネタバレ

時事ネタ+猟奇的描写のコミック 題材はファンタジーから風刺まで様々 現代版「カストリ雑誌」的漫画? おススメ度:★★☆☆☆ 久しぶりにホラー的な漫画を読んでみた。理由は簡単で、Kindle Unlim …

THE LEGEND & BUTTERFLY【映画】~ネタバレありの感想

綾瀬はるかの演技は良い キムタクはずっとキムタク 監督のセンスが古すぎる おススメ度:★★☆☆☆ 映画の説明としては「木村拓哉(以下キムタク)が織田信長、綾瀬はるかが濃姫役を演じ、二人にスポットを当て …

殺人依存症(櫛木理宇/幻冬舎文庫) ~ 話の要約とネタバレあり、閲覧注意

タイトル通り、閲覧注意 残虐で不条理な物語 後味は最悪だ おススメ度:★★☆☆☆ 最初にこんなことを書くのもどうかと思うが、本書を読むのはやめた方がいい。ただ残虐でグロテスク、実在の事件をネタにするな …

ハサミ男(殊能将之/講談社文庫)

ミステリ寄りのトリッキーなサスペンス 残酷描写が苦手な方も大丈夫 面白いが癖が強く、万人には薦められない おススメ度:★★☆☆☆ 少女の首にハサミを突き立てるという「ハサミ男」による残虐な連続殺人が起 …

ウンディネ (竹河聖/ハルキ・ホラー文庫) ~ほぼネタバレ感想

夜光虫(らしきもの)を海で拾って不幸に陥るカップルの話 ホラーはホラーだが、かなりファンタジー。タイトルに納得 すごく……読みやすいです おススメ度:★★☆☆☆ 「ああ、この話はこのまま投げるな」と、 …

アーカイブ