★★★★☆

SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE(フロムソフトウェア/PS4)

投稿日:2019年5月27日 更新日:

  • ストロングな和風3Dアクション
  • 美麗な絵、軽快な動き
  • 社会人殺しの難易度
  • オススメ度:★★★☆☆


ホラーを読むと言っておきながら、ゲームのレビューになるのだが、このゲームには言いたいことがいっぱいある。興味のある方はお付き合いを。

まず、昨今珍しいマルチ要素が無いソフトウェア単体完結型のゲームであるということ。修正パッチは当たるが、ネットワーク要素は無い。潔いではないか。作る方は相当な覚悟が必要だっただろう。

今さらスマホゲーのガチャ批判などするつもりはないが、マルチプレイヤー準拠の仕様ばかりになった状況には私は不満がある。

対人対戦が面白いことは事実だが、コンピュータゲームにはひたすら内包された世界で遊ぶという面白さもある。対人戦の面白さの本質はコミュニケーションで、結局、現実世界とダブる。対してネットワークに繋がないゲームはひたすらプログラム、あるいは自己との対決にある。閉じた世界ではあるが、その分、ゲームに作家性が現れやすい。私は仕事場から帰ってきてからまで、別のコミュニケーションストレスを抱えるのが嫌なので、後者のゲームを好む。もちろん、テトリス99やダークソウルなど、対人ストレスを和らげる工夫のあるゲームもある。

本ゲームは先のダークソウル、デモンズソウル、ブラッドボーンなどソウル系と呼ばれる高難度アクションRPGを送り出したフロムソフトウェアのゲームだ。この系統が好きな私が注目したのは当然の成り行きだったのだが、当初から危惧していたことがあった。

このゲームのジャンルが「アクションアドベンチャー」となっていたことだ。ゲームを遊ばない方には意味不明だろうが、簡単に言うとRPGというのは主人公が成長する(レベルがある)ものがほとんどだが、アドベンチャーということは、RPG要素も含む「かも知れない」程度のニュアンスになる。全く無い場合もある。極論だが、アクションRPGはレベルさえ上げてしまえば大抵の難敵は乗り切れる。しかし、レベルが無いということは、すなわち自分の腕が頼りということで、時間をいくら掛けてもムダ、ということを意味するのだ。同じジャンルで一番売れているのは「ゼルダの伝説」だろう。

ということは、アクションにかなり寄った作りだと容易に想像できる。まあ、アクションゲームだろうな、と思った訳だ。

それが分かっていたので、ずいぶん迷った。迷った末に買った。そして……約100時間近くを費やしてしまった。半ば、覚悟してやらかしたのである。

「ゲームは余った時間でやるもの」という名言はなんだったのか。

基本システムを見れば、このゲームの仕様が理解できる。一言で言えば架空の戦国時代を舞台に、忍である主人公・隻狼(セキロ)が剣で戦う3Dアクションだ。チャンバラアクションと言っていいだろう。

一番の特徴は敵も自分も体力(ヒットポイント)があるが、ゼロになっても単純には死なない。敵の場合「忍殺」というトドメを決める必要がある。強敵は何回も忍殺しないといけない。プレーヤーの場合は「回生」と言って、一回だけ生き返る(条件を満たせば複数回蘇る)。このトドメという概念に「体幹」というステータスがクロスする。体幹はある意味、体力よりも重要で、攻撃を当てる、ガードさせるなどでゲージが溜まる。特に敵の攻撃が当たるタイミングでガードすると、大きく体幹を削れる。これがいっぱいになると、いくら体力が残っていても、相手を忍殺出来るのである。体力が低下するほど、体幹ゲージは溜まりやすくなる。プレーヤーも同じゲージがあり、体幹を崩されるとしばらく無防備になるが、敵は忍殺はしてこない。もちろん大ダメージを受けるが。

これは一見すると、敵を素早く倒せる主人公に有利な設定に思えるが、実はアクションの難易度を上げる仕組みなのだ。さっき書いたように、ジャストガードすると一気に体幹を削れるのだが、逆に言えば、ジャストガードを決めないと中々倒せないということだ。簡単にジャストガードと書いたが、相手は同じタイミングで同じ攻撃をする訳ではない。多い少ないはあるが、バリエーションがある。またガード不能な技も繰り出してくる。これを瞬時に判断し、ガードするか見切る(攻撃的に避ける)か回避するかを判断しないといけない。強い敵ほど攻撃のバリエーションが多く、攻撃も素早い。攻撃を目で見てから避けるのは不可能で、相手のモーションを盗んで先読みしないといけない。この駆け引きが、剣戟アクションとしての面白さなのだが、タイミングが合わないとニッチもサッチも行かなくなる。

で、ここでRPGなら雑魚を倒してレベルを上げ、体力や攻撃力、武器を増やして挑める。しかしこのゲームは、アクションアドベンチャーなのだ。体力・攻撃力を上げるアイテムはボスが全部持っている。マルチプレイ要素は無いので、ネットワークの向こうの助っ人を呼ぶことも不可能。補助的なスキルや武器(手裏剣や斧など)は育てられるが、回数制限も厳しく、根本的な解決にはならない。つまり、目の前の強敵を実力でねじ伏せない限り、永遠に先に進めない。これが実に辛い。特にこの歳(何歳とは言わないが)になると、反射速度が落ちているし、集中力も続かない。何時間やっても倒せないボス。まさに中年サラリーマン殺しの設定だ。小さい頃やったファミコンのアクションゲームを思い出した。あの頃と一緒で、自分でなんとかする以外クリアできない。

クリアまでに計十体ほどの大ボス、二十体くらいの中ボスを倒したが、特に辛かったのは次の三人だ(ややネタバレ)。

「幻のお蝶」。名前は綺麗だが、まんま婆さんのくノ一。序盤に出てくる難敵で、こちらの装備も整わないのに、超高速で変則的に切りつけてくる。余りの強さに敬意を込めて通称「ババア」と呼ばれるのである。さらに、一回忍殺して倒せると思わせておいて、第二形態に変化して心を折ってくる。後半のボスも使ってこないような変則的な召喚魔法っぽい技(幻術)を使ってくる。これに対抗するアイテムは有限だ。いきなり阿鼻叫喚の地獄絵図で、ここでやめる人も多いと思う。とにかく、全ての攻撃反射的に対応できるレベル(10時間近くかかった)になってようやく倒せた。序盤でこれだから、笑ってしまった。

「葦名弦一郎」通称「弦ちゃん」。中盤に出てくるが、こちらも相当な強敵。メインストーリーの一端を担うキャラなのでとにかく強い。しかも上記のババアと違って、先に別の場所を攻略すると言ったこともできず、まともにぶつかるしかない。コイツも素早く多彩な攻撃で、強烈に攻めてくる。追加で使ってくる雷攻撃は空中で受けて落ちるまでに剣を振ると弾き返せるが、オッサンにこの瞬間的な操作は辛い。これも10時間以上戦って勝った。普通のゲームならラスボスでもいいはずだ。

で、最後はもちろん、ラスボス。名前は一応伏せるが、期待を裏切らない強烈な強さ。隙はかなりあるのだが、とにかく一発が重く体力ゲージが減らない。このボスに限らないが、実は攻略法が分かってからが勝負だ。その攻略法を実践する判断力と集中力が求められる。コイツは前座の中ボスも含めると四回連続で忍殺しないといけない。ジャストガードを決め続けても10分は戦わないといけないし、私のとったチキン戦法では30分程かかる。20分戦っても一回やられるとまた最初からだ。やられると「迷えば、破れる」と呟かれるが、まったくその通りで、一瞬でも対処を誤ると死ぬ。とにかく、死ぬ。ここにたどり着いてから倒すまで二週間かかった。流石に最後はやめようと思ったが、ここまで来て投げるのも屈辱的だ。ババアや弦ちゃんとの死闘はなんだったのか。努力とは一体何を意味するのか……などと、無駄に哲学的な気分になり、とにかく戦った。逃げまくりながら、一瞬の隙を見て、一撃与えてまた逃げる。それがわずか0.5秒ズレても失敗する。レバーを傾ける角度と時間、その体得に膨大な時間を費やした……。

ストーリーは何か不死の秘密がどうとか言っていたが、正直、どうでもいい。もうこれでラスボスを見なくていいかと思うと、実に清々しい気分だ。方法はどうあれ、倒したのは事実。例えは悪いが、ブラック企業を辞めたような変な解放感がある。

こんなに文字を書いて実にバカバカしい話をしているが、まあ、私が楽しんでいたのはお分かり頂けるだろう。それだけ苦労しても、クリアしたくなる魅力があるとも言える。製作陣が仕掛けた勝負に真っ向から挑む楽しさ。これはマルチプレイでは楽しめないストイックな感覚だ。

フロムソフトウェアのこのセキロを含むシリーズ……デモンズソウル、ダークソウル1〜3、ブラッドボーンは、全て宮崎英高というクリエーター(現社長)が、関わっている。彼のゲームはクリアすると、しばらくやりたくなくなるのだが、気づけばまたやってるから不思議だ。とはいえ、隻狼2が出たらどうかと言われると悩む。今は考えたくない。

ちなみにボリューム自体は少ないので、腕に覚えがあればむしろアッサリしているのでは。しかし、である。ネットでは高評価だが、みんな「分かっている」からこの評価なのだ。軽い気持ちでやってみるか、などと思うと激しく後悔するだろう。

ゲームは暇つぶし、だが、真剣に暇つぶしをしたい人に。

(きうら)


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