3行で探せる本当に怖い本

ホラーを中心に様々な作品を紹介します

★★★☆☆ 読書メモ

「怪奇実話集」を読んだ~読書メモ(63)

投稿日:2020年11月6日 更新日:

 

  • 読書メモ(063)
  • 日本と世界の怪奇実話集
  • なんか、なつかしさを感じる
  • オススメ度:★★★☆☆

【怪奇実話集とは】

最近、2冊の「怪奇実話」に関するアンソロジーを読んだ。ひとつ目は、かの平井呈一が編訳した「世界怪奇実話集」で、これはなんと60年ぶりの復刊だという。

もうひとつは、現代を代表する怪奇アンソロジスト東雅夫による「日本怪奇実話」に関するもの。中身は明治末年から昭和初期にかけてのものです。

ところで、「怪奇実話」とは何かということですが、これはたぶん現代も盛んに行われている怪談や、実録もののホラーなんかに、通じるものだと思います。怪奇な実話とは実際にあった体の怪奇な話であり、また、奇っ怪な実話でもあるのでしょう。怖さと懐かしさが同居したような短編集でした。

【日本編】

・『日本怪奇実話集 亡者会』(創元推理文庫)

まず収められている田中貢太郎のものは、現代ものに翻案できそうなのもあるんじゃないかと思わせるような実録ものが多い印象。
その次の平山蘆江のものに関しては、なんとなく女性が非主体的に描かれたものが多いような気がする。恨みをもった幽霊として化けて出てくるのが女性という図式があって、これは江戸時代から踏襲したものもあるのだろうか。ちなみに、それだけではないのもありますが。

その他には、小泉八雲ファミリーの系譜をたどれるような構成があってよかった。また、佐藤春夫と稲垣足穂の連作?は今でいう事故物件怪談にあたるのかな。
懐かしいと思ったのは、狐や狸に化かされたという信念があることか。この時代にはさすがに狸が人をだますということを真剣に考えてはいないと思うけどね。化け猫ですら本書には出てこなかった(はず)くらいだから。どうなんだろ。以前、キツネとエンカウントしたけど、とくに何かだまくらかされそうとは全く思わなかったけど。

あと、欧米由来のものとおもわれるオカルティズムの影響も感じられてよかった。

【世界編】

・『世界怪奇実話集 屍衣の花嫁』(創元推理文庫)

こちらは、だいぶ昔の英国の実録もの怪奇譚。といっても、そのほとんどが幽霊屋敷に関するもの。だいたいが、似たような感じだけど、そこに懐かしさをおぼえてよい。ちょっと、平板なところもあるけど、後半部分はおもろかった。「魔のテーブル」とか「石切場の怪物」とか、あと「ベル・ウィッチ事件」とか。

【怖がらせた話】

以前、自分の(たいして怖くはない)恐怖体験を書きました。10年以上前に体験した、早朝の軽い山登りのときの話です。薄いもやに包まれた朝6時くらいの山頂で、老夫婦らしき影がベンチに座って食事をとっている光景が視界に入りました。それを見た瞬間、「あっ、これは見たらあかんやつや」と直感がはたらいて、すぐに踵を返しました。という話です。

ほんで、また別の日に同じ道を歩いていました。その日の朝はかなり濃い霧で、視界はかなり悪くて数メートル先しか見えない状態でした。そんななか歩いていると、前方から砂利を踏む大きな足音が聞こえてきました。そのとき、これは生きてる人間のものだなと思いました。そういうときの私の勘はするどくて、実際霧から現れたのは間違いなく生きてる50代くらいのおっさんでした。左の方へよれて、そちらに会釈すると、どうしたことかそのおっさんはこちらを見たとたん歩行を止めて後ずさりしました。そして、こちらをすごい目付きでにらんできたので、「なんやねん」と思いつつ、一応こちらも目を細めてにらんでおきました(視力が悪いので)。そんなこんなでちょっとした山登りも終え、帰宅して顔を洗おうと洗面所の鏡を見たときに、あのおっさんが何を見ていたのか判明しました。そうなんです、私の肩に・・・でなくて、私の相貌がまんま「こいつ、幽霊やん」と思えるほど血の気の失せたもののようなかんじだったのです。要は、霧から現れたどちらかというと色の白い私の顔を見て、あのおっさんが私を亡霊かなにかと、一瞬そう思ったのでしょう。という話でした。

(成城比丘太郎)


-★★★☆☆, 読書メモ
-, , , ,

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

新興宗教オモイデ教 (大槻ケンヂ/角川文庫)  ~あらすじ、感想、軽いネタバレ

人を発狂させる力をもった人間の暴走を描く 青春の行き場のないエネルギーのマイナス方向への発散 精神的なエロ・グロ要素満載 おススメ度:★★★☆☆ 「筋肉少女帯」などミュージシャンとしても有名な大槻ケン …

事故物件7日間監視レポート(岩城裕明/角川ホラー文庫)

手堅い作りのJホラー タイトルまんまの内容 オチはイマイチ おススメ度:★★★☆☆ 為になる小説とそうでない小説は確かにある。その基準ははやり、大多数の人の評価だろう。そして、読みたい作品≠為になる作 …

タイトルに書けるほど感想に自信がない短い感想

鬼滅の刃無限列車編 TVで観ました 原作は読んでません おススメ度:★★★☆☆ うーん、この映画がファンに熱烈に受けた程度なら分かる。しかし日本映画の興行成績を塗り替えてしまったという事実を知っている …

一ダースなら怖くなる (阿刀田高/文春文庫) ~紹介とレビュー、軽いネタバレ

男と女にまつわる怖い話が1ダース=12編 絶妙なブラックユーモア的な落ちがつく 大なり小なりエロス的要素がある おススメ度:★★★☆☆ 著者の阿刀田氏は星新一氏とならぶショートショートの名手として知ら …

ゆらぐ玉の緒(古井由吉/新潮社) ~感想というより、応答のような創作 

これといった話の筋はない。 現在から過去へ、時空を自在に往き来する随想。 私の感想というより、(応答のような)創作。 おススメ度:★★★☆☆ (編者追記・内容の概要(Amazonの紹介文の転記))陽炎 …

アーカイブ