3行で探せる本当に怖い本

ホラーを中心に様々な作品を紹介します

★★☆☆☆

パラサイト・イヴ(瀬名秀明・新潮文庫)※注 核心に触れるネタバレ感想あり

投稿日:2017年3月9日 更新日:

  • 医学的知識を活用したSFホラー
  • 途中までは面白いが、オチに大不満
  • ネタバレありで、以下で詳しくその理由を説明します
  • おススメ度:★★☆☆☆

昨日、鈴木光司氏の「リング」を紹介したので、年度が近く1995年に発表され、その医学的知識で話題になった(第2回ホラー小説大賞・受賞作)を紹介したい。今回も古い作品なので、ネタバレ方式で書くので、未読の方はご注意ください。

全体のあらすじは、主人公・薬学部・生化学者の永島利明の妻が脳死状態になり、腎臓バンクに臓器を提供。永島は、妻に執着があり、移植手術の時、妻の肝細胞を入手して培養する。一方、移植を受けた安斉という女性は、悪夢にうなされるようになる。培養されていた細胞は「Eve1」と命名され、驚くほど速く増殖し、最後は自分で外に出て、偶然出会った朝倉という女性に乗り移る。意志を持った「Eve1」は、腎臓移植をした安西を探し出し、子供を産ませようとする。主人公は止めようとするが「イヴ」は生まれ人を攻撃する。主人公は「イヴ」と融合し、その暴走を止める。犯人はミトコンドリアで、人間を攻撃するというSFホラー。

と、書いてみたが、正直途中から意味が分からないと思う。実際には作者の医学的知識を生かして、一応、説得力を持たせた理由が書き連ねてあるが、それでもオチには納得できない。
<ミトコンドリアは真核生物の細胞小器官である。二重の生体膜からなり、独自のDNAを持ち、分裂、増殖する(Wikipediaより抜粋)>

さらに受け売りで申し訳ないが、Wikipediaによれば「自己の遺伝子のために生物に寄生していると考えられる」と、書かれているので、それをベースに話が構成されたと思うのだが、ひとこと突っ込みたい。

「ミトコンドアが火を噴くか!」

途中まで、結構ハラハラして読んでいたのに、最後は何だか分からないSF怪人になって、火を噴くというのはいかがなものか。そもそもDNAは分かるが、ミトコンドリアがどこで思考し、感情を持っているのか。なまじ医学知識が活用されているので、そのギャップは激しく、とにかく納得できない。ゴジラじゃあるまいし、そもそも火に弱い細胞が火を使ってどうする(その理由はちゃんと書かれているが)。

当時としては斬新なテーマで、正確な知識だったというのも分かる。文章力もある。だから期待して読んだのだが、あれから20年経った今も納得できないのである。上記のオチを知ってから読むと、逆に面白いかも知れないが、色んな意味で衝撃的な一冊であったのは間違いない。

(きうら)


(楽天電子書籍版)


-★★☆☆☆
-, , , ,

執筆者:

関連記事

自殺について 他四篇 (ショウペンハウエル/岩波文庫)

短い自殺への考察 論調は自殺の賛美 特に深い示唆はない おススメ度:★★✩✩✩ ショウペンハウエル(アルトゥル・ショーペンハウアー)は、Wikipediaの受け売りで書くと、ドイツの哲学者。仏教精神そ …

ジェノサイド(高野和明/角川文庫)

傭兵と薬学の大学院生が同じ真相に導かれるサスペンス 興味深い設定と読みやすい文章 オチが人によっては評価が割れる。私はだめだった おススメ度:★★☆☆☆ 以前、★5つで紹介した「13階段」というサスペ …

メルキオールの惨劇 (平山夢明/ハルキ・ホラー文庫)  ~あらましと感想、軽いネタバレ

エキセントリックな文章と物語 ケレン味たっぷり 普通の悪趣味幻想小説 おススメ度:★★✩✩✩ 書評サイトとしては反則なのかもしれないが、Amazonのレビューが高かったので、内容を一切確認せずに購入し …

牛家 (岩城裕明/角川ホラー文庫)

ゴミ屋敷の清掃員が体験する恐怖 リアルな出だし、シュールな結末 ゾンビ物「瓶人」収録。長さは同量。 オススメ度:★★☆☆☆ このところ、別の世界を覗きたいという欲求から、自分が詳しく知らない職業を扱っ …

ケモノの城 (誉田哲也/双葉文庫) ~あらましと感想

いわゆる一つの胸糞悪いはなし 実在の事件を材に取ったというか、ほぼそのままの気が よほどのサディストでもない限り読まないほうが良い おススメ度:★★☆☆☆ 本を定価で買って久しぶりに後悔した。むろん、 …

アーカイブ