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★★★☆☆ 読書メモ

『かわうそ堀怪談見習い』(柴崎友香、角川文庫)〜「読書メモ(90)」

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  • 「読書メモ090」
  • 怪談作家へと転身するわたしに起こる怪異。
  • 怪談というより、奇妙な話。
  • オススメ度:★★★☆☆

【近況〜怪談】

この夏には、少し怪談を聴きました。怪奇小説も少し読みました。ホラー関係の番組も少し観ました。ホラー関係の番組というと、ほん怖とかです。

ちなみに、私自身に怪談めいたことは起こりませんでしたけど、蟻が家に侵入してきた話なら。20年くらい前に、我が家の飴ちゃんにたかって列をなしていたのとおそらく同種の蟻さんが、数年ぶりに我が家の同じ侵入路からこんにちはしてきましたので、またその侵入経路をふさぎました。ここ最近ふさがなかったからなぁ。

【怪談についての小説】

さて、いくつか読んだ怪奇小説のうち、柴崎友香の『かわうそ堀怪談見習い』を取り上げます。タイトルに「怪談」がついていたので、柴崎友香の怪談とは?と、少し身構えて読み始めました。読みすすめていくうちに、おもしろ怖くなる怪異譚の集まりで、個人的には興味深いエピソードがいくつかありまして。

話の筋は、恋愛作家の「わたし」が怪談作家へと転身するために、東京から故郷の大阪へと戻ってきて、そこから不思議な出来事に遭うようになるのです。

その不思議なこととは、友人の「たまみ」から聞いた怪談や、その他の人物から聞いた話や、自分自身に起こる怪異譚めいた出来事などなどです。この「わたし」には霊感めいたものはないと書いているものの、大阪に戻ってから、何かを思い出すように不思議な出来事に遭うのです。これを読むと大阪が怪談まみれの地だと思われることはないでしょう。

その出来事には、明らかに怪談の類いが含まれます。なぜ故郷に戻ってから怪談めいた出来事に遭うのかの理由めいたものは、作中でほのかに明かされます。27章からなる怪異譚は、それぞれが単独でありつつ、繋がってもいますので、枠物語ともいえるでしょうか。見えない人たちが見えてしまう話や、いわくのある茶筒のことや、蜘蛛に関する話などなど内容は雑多ではありますけど。

作者が、「わたし」を通じて怪談ライフ(?)や怪奇ライフ(?)を楽しんでいるかんじです。最終的に、「わたし」は順調に怪奇現象に見舞われつつ、順調に怪談作家として進んでいけるようです。最終章に現れるもうひとりのわたしとは、何なのか。それ以前の「わたし」の姿なのか。だとしたら、本格的な怪奇作家としてうまくいくのかも。

ちなみに、怪談作家となる「わたし」が眼鏡をかけてるかどうかはわかりませんが、なんとなくかけてるような気がします。

まとめると、ほんとにあった怖い話を少し不思議にしたようなエピソード群ですので、ホラー苦手な人も読めるかと。

(成城比丘太郎)


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