はじめに
私の更新としては2020年の最後になるので、タイトルの企画を立ててみた。後に長く語り継がれるであろう世界的な災厄が巻き起こったこの1年。現在進行形で悪化の一途を辿っているが、この文章そのものが究極のホラーになるのではないかと思わないでもない。私が紹介したキングの「ザ・スタンド」やJホラーの「感染領域」を引くまでもなく、疫病関連のネタも多いが、現実に起こるとは思わなかった。昔エボラを扱った「ホット・ゾーン」を読んだとき(1994年)は対岸の火事だったが、現在は母屋が燃えている。来年はパラダイムシフトが起こるのか? それともワクチンで一気に鎮静化するのか?
どちらにせよ、死について考えることは自然なことであるし、過剰に恐れる必要もない。むしろ元気な時こそ、死を意識しないと、その恐怖に晩年を台無しにされるだろう。幸い(禍い?)私は何度も死にかけたので、彼は盟友だと思っている。
前置きが長くなった。それでは、盟友と乾杯しながら、3行のまとめに私が短いコメントをつけて紹介したい。
※【】は執筆者
20位 「待つ」ということ(鷲田清一/角川選書)【成城比丘太郎】
- 「待つ」ことの臨床哲学的考察
- 「待つ」ということは、なにもしないことなのか
- 本書の紹介ではなく、個人的な考えを断章的に書きます
- おススメ度:★★★☆☆
※タイトル通り「待つ」ことへの考察。一応看板はホラーサイトではあるが、こういうタイプの本を紹介することも結構あった。しかし、20位とは意外。
19位 首都消失 (小松左京/ハルキ文庫) ~概要と感想、かなりのネタバレ 【きうら】
- タイトルが全てのがっかりSF小説
- 首都は消失する、するが……
- 読みたいテーマと微妙に違う
- おススメ度:★★✩✩✩
※全然勧めてなくて笑ってしまうが、事実だからしょうがない。この古典SFが上位なのはこのサイトの特殊性を表している気がしている。いまだに面白いとは思わないなぁ。
18位 みちびき地蔵(まんが日本昔ばなしより)~話の全容(ネタバレ)と感想 【きうら】
- 親子が体験する津波の恐怖
- 死の前日に祈りにくるという地蔵の前に無数の亡霊が……
- 静かに、深く、恐ろしい
- おススメ度:★★★★☆
※必殺の「まんが日本昔ばなし」のまとめシリーズの一つ。著作権的にはちょっとグレーだが、まあ皆さん「昔ばなし」の怪談が好きだったんだなぁと実感する。これは津波を扱っているので、東日本大震災の時もかなり話題になった。あの年もこの世の終わりかと思ったな。
17位 文字禍(中島敦/Kindle版)~概要と感想、中盤までのネタバレ 【きうら】
- 文字による禍をアッシリアの伝説で説く
- 短く鋭い文章と明確な主題
- ネット時代にこそ意味があるストーリー
- おススメ度:★★★★☆
※詳しい内容は忘れてしまっていたが、「山月記」で著名な中島敦のちょっとホラーな短編。その硬質な文章は読んでいて心地よい。本好きへの皮肉と警鐘になっている。
16位 山月記(李陵・山月記より) (中島敦/新潮文庫) ~ネタバレ感想 【きうら】
- 中島敦屈指の名文
- 物語は分かりやすく、論旨は明瞭
- 身につまされるような話
- おススメ度:★★★★☆
※これを書くまで知らなかったが、まさかの中島敦の2連投! 最初に読んだのは学校の教科書だったと思うが、その設定の面白さ、教養の高さ、余韻のある結末などは何度読んでも色褪せない。
15位 グイン・サーガ(栗本薫/ハヤカワ文庫) ~簡単な概論的感想 【きうら】
- 正伝130巻の超長編ファンタジー、しかも作者逝去により未完
- 2017年9月現在、別の作家により続編が刊行中(141巻まで刊行)
- 自宅にある単一の物語としては最も長い、そして……
- おススメ度:評価不能(長すぎてその巻数によって評価が激変)
※今調べたら2020年12月の時点で147巻まで出版されている。栗本薫がご存命なら160巻くらいまで進んでいた気がする。まあ、長いファンタジーだが、17、いや30巻までは読んでもいいと今でも思う。
14位 トロッコ(芥川龍之介/岩波文庫)〜趣向を変えて誰でも書けるオリジナル感想文風(小学生向け・理論編)【きうら】
- 名作トロッコの感想を小学生風に
- これでだれでも「普通」の感想文を量産
- さらに「良」をもらえるポイントも解説
- おススメ度:★★★★✩
※なんかホラー小説紹介サイトではなく、文学入門サイトのような気がしてきた。しかし、この記事はタイトル通り読書感想文の書き方を書いたハウツー記事である。かなり力を入れて書いた記憶があるが、なかなか自分でも面白いと思う。1200字程度の感想文なんて、裏表紙の紹介を読むだけで書けてしまう(はず)。結局実践編は書いてないな……。
13位 鬼ゆり峠〈上〉〈下〉(団鬼六・幻冬舎) 【きうら】
- 閲覧「超」注意。SMポルノ小説です
- 歴史もので、男女がとにかく変態行為で責められる
- 長大な文章。一部の変態紳士におススメ。
- おススメ度:★★★★☆
※上にある通り、完全に変態SMポルノ小説です。SM要素はすべて網羅している団鬼六渾身の歴史(?)大作。一応注意しておきますが、これを読んでいる高校生以下諸君は読まない方がいいでしょう。アブノーマルになっても責任は持てません。
12位 夏の花(原民喜/集英社文庫<青空文庫>) ~紹介と感想、軽いネタばれ 【成城比丘太郎】
- 「壊滅」の予感を三人称で書く。
- 「私」が妻の墓に供えた花と、その後の惨禍と。
- 「廃墟」になった街を歩き回る「私」。
- おススメ度:★★★★☆
※原子爆弾の惨禍を描いた本作は3部作で、成城氏によって簡潔に紹介されています。13位とのギャップが凄いですが、「読む価値のある本」という意味では段違いですので、高校生以下諸君はまずこちらを読みましょう。私も後で読もう→夏の花を読んだ。その淡々とした描写に放射線障害の悪夢。もうだめだ。
11位 桜の下には何がある? ~「桜の森の満開の下/坂口安吾」&「桜の樹の下には/梶井基次郎」 【成城比丘太郎】
- 2編とも短くて簡単に読める。
- 桜には魔力のようなものがある(個人差あり)。
- 狂気と正気のあやうい均衡が感じられる。
- おススメ度:★★★★★
※えーと、ここまでSFとファンタジーと哲学書と昔話と文学があるだけで、ホラー小説が一つもないことにお気づきだろうか? うーむ。これでいいのかどうか、ブログの管理者としては若干疑問も感じるが、まあ、適当な性格なので別に気にしない。本書も名作です。
10位 緊急討論・Apple Watch Series 5 は何を反省すべきか? 【きうら】
- 革新的進化はできませんでした
- できませんでした
- できませんでした
- おススメ度:★☆☆☆☆(Apple Watch Series 5)
※もう、なんのサイトか分からなくなってきた。ちなみに、今年発表されたApple Watch Series 6も「電池の持ちが一緒」という致命的欠陥は改善されていない。確かに早くなったし安くなったが、睡眠管理には向かない。私はその点を考慮し、機能は落ちるが電子インクを文字盤に採用し、驚異の2週間というバッテリー寿命を実現した、フォッシルのハイブリッドスマートウォッチHR FTW7010を愛用している。主な用途は睡眠量の計測と、ワイヤレスBluetoothイヤホンの音量調整と曲の早送り/巻き戻し。これで防水が完ぺきなら24時間装着したままでいられるのだが。
9位 パラサイト・イヴ(瀬名秀明・新潮文庫)※注 核心に触れるネタバレ感想あり 【きうら】
- 医学的知識を活用したSFホラー
- 途中までは面白いが、オチに大不満
- ネタバレありで、以下で詳しくその理由を説明します
- おススメ度:★★☆☆☆
※ようやくJホラーが登場したと思ったら、よりよってパラサイト・イヴとは。古いし、勧めてないし、どうしようもないし……いまだにミトコンドリアが意志を持つという「ギャグ」には納得していない。どうしてこんなのが流行ったのだろうか。
8位 シュナの旅 (宮崎駿/アニメージュ文庫) 【きうら】
- 初期・宮崎駿の絵物語
- ナウシカ+もののけ姫の原点
- 地味だが惹かれるものはある
- おススメ度:★★★☆☆
※今やすっかり角が取れてしまった駿先生であるが、未だに「鬼滅」のヒットにコメントしてくれたりして、やる気は十分とみた。そんな先生の若き日の情欲が炸裂するシリアスな一冊。意外に読んでない人が多いのか、最近でもこの記事が読まれている。「虐げられている高貴な少女を愛好する」という、宮崎アニメの「闇」の部分を堪能できる点で貴重な一冊だろう。
7位 邪魅の雫(京極夏彦/講談社) ~続刊「鵺の碑」はいつ出るのか&感想 【きうら】
- 毒をテーマにミステリ寄りの展開
- 全体的に薄味の内容で、物足りない
- 続編は現段階でやはり未定。詳細は下段参照
- おススメ度:★★★☆☆
※「邪魅の雫 続編」でGoogle検索すると、1位に本記事が出てきた。まあ、半分狙って書いたのでこれはうれしいが、肝心の続編はやはり出ていない。というか、出ない気がしてきた。いや、しかし、京極夏彦ならいつか3巻同時発売とかで完結もあり得ると思っている。
6位 十六人谷(まんが日本昔ばなしより/富山の伝説<24>より)~話の全容(ネタバレ)と感想 【きうら】
- 約10分の強烈な昔ばなし怪談
- 絵も話も怖いが「間」が最高に恐ろしい
- 公式には見られないので詳しめのあらすじ付
- おススメ度:★★★★★
※昭和の混沌としたテレビアニメ界だからこそできた、ゴールデンタイムで撃ち放たれた猟奇殺人ホラーアニメ。10分間に凝縮されたトラウマ映像が満載。執念や不条理を軸とし、死の恍惚まで盛り込んだまさに日本的怪談の傑作。ただ、これ、本じゃなくてアニメなんだよね……。
5位 絶対に3週間で5キロ痩せる方法の解説(怖い話)と「はじめの一歩」の短い感想 【きうら】
- 必ず痩せる、というか痩せた
- 体重が減るという体験
- あと、はじめの一歩の感想
- おススメ度:勧めない
※嘘は書いてないが、この方法でダイエットすると多分、死にます。世のダイエット商法に対するアイロニーのつもりで書いたのだが、やはり、痩せることに興味を持たれる方は多いようで……。医学的にはやや太っている方が病気に罹りにくいので、BMIが正常値ならダイエットはやめましょう。これは一種の造られた現代の呪いです。
4位 トップページ
※本来ならこのトップページが1位のはずだがそうではない。ということは、記事が検索で上位に出るか、どこかに直リンクが張られているかということになる。まあ、別にいいんですけどね。
3位 私のクラスの生徒が、一晩で24人死にました。(日向奈くらら/角川ホラー文庫)~あらすじと後半ネタバレ気味紹介 【きうら】
- タイトル通りの大量殺人(?)の謎を追う
- 猟奇趣味全開の完全なる現代ホラー
- 一読は面白いが、すごく惜しい。
- おススメ度:★★★☆☆
※これより面白いJホラーはいっぱいあるのに、ヒット数だけでいえば、今年のJホラーでは当サイトのNo.1ということになる。多分、漫画化されたので、そのあらすじを読みにいらっしゃるのではないかと思っているが……。ま、タイトル勝ちの一冊。「バトルロワイヤル」や「悪の経典」の系譜と思ってもらって間違いない。暇なら読んでもいいかな、くらいです。
2位 セメント樽の中の手紙(葉山嘉樹/ちくま文庫)~あらすじとそれに関するネタバレあり、感想 【成城比丘太郎】
- 文庫6ページ分で読めるプロレタリア文学の傑作
- 身を粉砕されてセメントと一体化した男の話。
- 怖さより労働者のかなしみがメイン
- おススメ度:★★★★★
※成城氏の初投稿記事です。これが2位というのが、ホラーサイトとしても、本サイトの異端性を表しているよう。青空文庫でも読めるので、気になった方は是非どうぞ。
1位 飯降山(まんが日本昔ばなしより)~話の全容(ネタバレ)と感想 【きうら】
- 3人の尼さんの山での修行の顛末
- 人間の業の深さを描く
- ラストの変貌ぶりが怖い
- おススメ度:★★★★☆
※そして堂々の1位が「まんが日本昔ばなし」シリーズでした。はい。20作品(正確には19作)の中に、純粋なホラー小説が2冊しかないというのはどうかと思うが、そういうサイトです。ちなみに本作も約10分の中に「人の善性の中に潜む獣性&カニバリズム」という子供には重すぎるテーマをぶち込んだ傑作。放送当時はもちろん、文部省(現在の文部科学省)推 薦 作 品 ! 脚本を書いたのは知る人ぞ知る鬼才「いがらしみきお」氏。氏の本性は「バガヤロ 見たことのないものを見せてやろう」「フジョーリ そんなものはとっくに書き尽くした」というコピーが躍るいがらしみきお自選集 (1)という4コマ漫画を読むと分かります。
まとめ
以上、気まぐれでまとめてみたが、内容を改めてみてみると、来年やってもほとんど同じ結果なんじゃないかと思えてきた。それでもせっせとホラーを読んで、「なんだかなぁ」と思っている自分が結構好きだ。ちなみに1位と20位にはアクセス数でいえば10倍の開きがあります。
では、よいお年を! 一年間ご愛顧ありがとうございました。
(きうら)
ブログ楽しく拝見しています。
作品のレビューページにコメント欄が見つからずこちらから失礼しますが、三津田信三の刀城言耶シリーズは是非首無の如く祟るものを読んでみて欲しいです。
相変わらずキャラクターがラノベ風ですが、私は全体を通じて怖くて気持ち悪かったので。ミステリとしても完成度高いと思います。
コメントありがとうございます。
かなり長期にわたって運営していますが、メッセージを頂けるのは非常に稀なので嬉しいです。「首無の如く祟るもの」は早速注文してみました。
後日、レビュー予定です。楽しみにしています。